暫定龍吟録

反便利、反インターネット的 This blog has not been updated since 2017

タグ "インターネット" の付いた記事

実用主義批判


出ない順 試験に出ない英単語出ない順 試験に出ない英単語
(2012/10/27)
中山

商品詳細を見る


 日本は“実用”に塗れてゐる。

 現代日本の、あまりにも極端に偏りすぎた「実用思考(指向)」が好きではない。


インターネットとは何かを教へてくれる本がない

 ずいぶん昔のことだが、ある時「インターネットってなんだらう?」と思って本屋に行ったことがある。インターネット関聯の本が並んでるコーナーに行ってみたが、そこに並んでゐたのは「インターネットの使ひ方」の本ばかりだった。「インターネットとは何か」といふことを初心者向けに解説してくれてゐる本は一冊も無かった。
 「さあ、君もインターネットを始めてみよう!」とか、「まづは、画面上の青い“e”のマークをダブルクリック!!」とか、「ヤフーで検索してみよう!」とか。

 それらはブラウザーを使ったウェブブラウジング(またはネットサーフィン)の説明であって、インターネットの一部の説明ではあるが、これでインターネットを説明したことにはならない。
 世の中にこれだけインターネットが普及してゐるのに、インターネットについて説明してゐる本が一冊も無いことに私は驚いた。


本屋に並ぶ「フェイスブックの使ひ方」本

 フェイスブックが登場した時(日本に伝はった時)もさうだった。

 私もかつてこのブログでフェイスブックについての記事を幾つか書き、それなりのアクセスがあったが、それらは「フェイスブックとは何か」についての解説記事であり、「フェイスブックの使ひ方」の解説記事ではなかった。

 だが、本屋に行けば、

「フェイスブックの使ひ方」
「フェイスブック使ひこなし術」
「フェイスブック活用法」
「今日から始めるフェイスブック」
「フェイスブックを使ったセルフブランディング」
「フェイスブックの100のTips」

とか小技集とか、そんなのばかり。
 なぜ、使ひ方についての本ばかりしかないのだらう。日本だけ?

 フェイスブックとは何か、といふ疑問に答へてくれる本は一冊もなく、大抵はかうした「使ひ方」系の本の冒頭に「フェイスブックはいろんな友達とやり取りができる楽しいツールです」などといった極めて大雑把な紹介の仕方がされてゐるだけである。


“実用”に偏る語学書

 小学校6年生の時に、私は英検の正式名称が「実用英語技能検定試験」であることを知った。それからはなんとなく英検に対する興味が薄れ、受験しなくなった。似たやうな思想のTOEICも受験しなかった。

 語学には興味があるので、よく本屋さんの語学書コーナーに行くのだが、手に取ってぱらぱらと捲ってみて速攻で棚に戻す類の本がある。

「空港で」
「ホテルのフロントで」
「タクシーで」

などと書いてある本だ。私は別に海外旅行に行くわけではない。飛行機にも乗らないしホテルにも泊まらないしタクシーにも乗らない。
 だが英語に限らず中国語であれタイ語であれ何語であれ、かういふ「実用」、「実践的会話集」のやうな本がほとんどである。
 かういふ本“も”あっていいが、かういふ本“しか”ない現状には、とても不満を感じてゐる。


ネットとは何かをわからないまゝネットを使ひこなす人たち

 昔、「ネットの達人」とでも呼ぶべき知人がゐた。わからないことがあるとすぐに検索で調べ、その検索テクニックもすごく、マウスジェスチャーやショートカットキーなど、時短に繫がるさまざまなテクニックに精通してゐた。未だにショートカットキーの一つも知らない私から見たら「達人」に思へた。
 だがその彼は「インターネットとは何か」といふことは知らなかった。DNSとかプロトコルとかいふこともおそらく知らなかった。つまり彼は「ネット使ひの達人」だったのだ。

 パソコンを知らない人にパソコンを教へようとする時に私は「そもそもパソコンとは何か」といった基礎基本から教へたがるのだが、大抵は「基礎基本とかそんなのどうでもいいから、早く使ひ方を教へてよ」、「パソコンでグラフを作るやり方を教へてよ」と言ふ人の方が圧倒的に多い。

 「実用」の方がニーズがあるのだらう。

 もちろん、基礎基本が解ってゐなくても、日々パソコンやネットを使ひこなしてゐる人はたくさんゐる。

「インターネットって何?」
「ウェブって何?」
「スマホって何?アイフォンとどう違ふの?」
「アプリって何?」
「最近、TV-CMでよく聞くLTEって何?Wi-Fiとどう違ふの?」
「テザリングって何?」
「最近流行りの『LINE』って何?」

 かうした質問に私は答へることができる。

 だが「LINEの使ひ方を教へて!」と聞かれると困る。使ひ方は知らない。LINEを使ったことがないから。
 フェイスブックについてもこのブログで過去にいろいろ書いたが、私自身はフェイスブックを使ったことはないので、使ひ方とか使ってみた感想とか聞かれても分からない。
 LTEもWi-Fiもテザリングも私は使ってゐないので、使ひ方とか具体的な設定の仕方については分からない。でも、それが何であるかを説明することはできる。

 だが世の中の大抵の人は逆なのだ。「アプリって何?とあらためて聞かれると説明できないけれど、でも、アプリ毎日使ってるよ!面白いアプリいっぱい知ってるよ!」といふ人がほとんどなのだ。


実用重視に偏りすぎてゐる日本

 アプリとは何か、ソフトとはどう違ふのか、そんなことは知らなくても生きていける。いや、むしろそんなことは知らなくてもアプリの使ひ方を知ってゐることの方が、生きていく上では重要である。

 「実用の役に立たない英語なんてクソだ」と言はんばかりの風潮が、私が子どもの頃の英語教育にはあった。そしておそらくその風潮は今も変はってゐない。

 しかし実用がすべてだらうか?
 今の日本はあまりにも実用主義に偏りすぎてはゐないか。

 かつてはもっと教養などを重視する風潮もあった。
 例へば、「百人一首の上の句を聞いて下の句を言へる」とか。
 私も子どもの頃、下の句を全部覚えたが、それが人生で何かの役に立ったかと言へば役に立ったことは一度もない。今時、国語のテストにすら出ない。かるた名人とかかるたクイーンを目指すのでもないかぎり、生きていく上で何の役にも立たない知識である。

 しかし生きていく上で何の役にも立たないからといって、かういふことを切り捨てていってしまってよいだらうか。


行き過ぎた実用主義からは新しいものもユニークなものも生まれない

 なぜ日本から「グーグル」や「フェイスブック」が生まれないのか、といふ議論を時々聞くことがある。
 日本の本屋に何十冊と並んでゐる「フェイスブックの使ひ方」、「フェイスブック活用法」といったタイトルの本を見てゐると、なんとなくその理由もわかるやうな気がする。

 日本人はみんな、「フェイスブックの作り方」や「思想」よりも「使ひ方」や「活用法」に興味があるのだ。それを活用してどうやって生活を便利にするか、仕事に生かすか、人脈を築くか、金を儲けるか、さういったことにしか興味がないのだ。


 徹底的に切り詰めた実用主義から感じるのは、「基礎基本の等閑」と「余剰の少なさ」である。

 基礎基本が解ってゐなければその上に新たな世界を構築することはできないし、余剰がなければユニークなものは何も生まれないだらう。

 そして日本では実用主義の上に非効率な「形式主義」が共存してゐるので、また厄介である。
 「効率重視」と言ひながら、小技や小手先のテクニックにばかり習熟し、根元や基礎については見直さうとすらしない。

 その問題についてはまた後日書くことにしよう。



※この記事を通して「日本は」「日本人は」と書いてゐるのは、単に私が外国を知らないからである。また、この記事における「実用主義」は英語の「プラグマティズム」の訳ではない。


スポンサーサイト



ITの基礎を知るために読んでおきたい本

 最近読んだのが、『知っておきたい情報社会の安全知識』(坂井修一著・岩波ジュニア新書)といふ本。

知っておきたい 情報社会の安全知識 (岩波ジュニア新書)知っておきたい 情報社会の安全知識 (岩波ジュニア新書)
(2010/03/20)
坂井 修一

商品詳細を見る

 岩波ジュニア新書は子ども向けの本だと思って侮ってゐると、意外とかうした良書が出てることが多いので、時々チェックするやうにしてゐる。特に子ども向けに書かれてゐるからこそ、非常にわかりやすく書かれており、ある分野の入門書や教科書とするにはもってこいである。

 この本は、大人が読んでも十分読みごたへがある。といふより、むしろ、今インターネットを使ってゐる大人たちで、学校できちんと系統立ってITについて学ばなかった世代の人たちにこそ、この本は読まれたい。

 今の若い世代の人たちは、ちゃんと学校でITを基礎から習ってゐる。しかし上の世代の人たちはコンピュータもインターネットも使ひこなしてゐるとしても、それはほとんど独学で身につけたものである。だから意外と基礎がわかってゐなかったりする人は多い。

 以前このブログで、NHKの『「ネットに弱い」が治る本』を、「最高の教科書」として紹介したが、この本も、さうした「普段からネットは使ひこなしてゐるんだけど、意外と基礎的なことがわかってないんだよね」といふ人には、良い教科書になると思ふ。

 例へば、「ITは性善説によって作られてゐる」といふ本書の言葉は、さまざまなことを考へさせられる。ITによって齎されてるさまざまな問題が、ITの構造そのものが持つ「性善説」といふ性格に起因してゐるなら、その構造やインターフェースを読み解くことによって、私たちITの利用者がどのやうに構造に流されてゐるかの一部を自覚することにもなるだらう。

 また著者は、ITによる質感・量感の喪失、といふ重要な問題も提起する。私たち生身の人間が、さうしたことによってITにどれだけ騙されるのか、といふことについて、こゝから考察を深めていくこともできる。

 ITと言ふと、それを使ってどれだけ楽しいことができるか、といふことばかり皆考へがちである。さうした明るい未来ばかり説く『ウェブ進化論』のやうな本は好まれる。
 だが、ITが齎すマイナスの問題点について考察することは、もっとずっと大切なことだ。なぜなら、「楽しい」といふことは、「マイナスなこと、苦しいこと、不快なことが無い」といふことでもあるからだ。

 私はほゞ毎日、インターネットを通じていくつかの不快に出会ふ。「ぢゃあ、インターネットやめれば?」といふわけにはいかない。これからの時代、ますます多くのデバイスがオンラインに繋がっていく。もはやオフラインの孤高を守り抜いて生きるのは極めて難しい時代になってゐる。

 どうしたら、インターネットの不快を感じずに、ネット生活を送ることができるだらう。
 かうしたことは、ネット社会の作り手である大人たちが考へなければならない問題だ。その杜撰な試作品の犠牲になるのは、いつだってその時代の子どもたちなのだ。

 「面白さうだから、とりあへず作ってみた」。ネット大好き人間には、さういふ人間が多い。新しい世界の創造のためにはさうした好奇心も必要だ。だが私には、かうした発想が時に軽率な遊びに感じられる。
 大人たちの一時の遊びに振り回される子どもたち。例へば、キーボードの並びはなぜQWERTY配列にしたのか。ユニバーサルデザインからはほど遠い。日本語を入力するにはまったくの不自然な並び。学校でその不自然な並びのキーボードのタッチタイピングを学ばなければならない子どもたち。

 ITが齎すマイナス面にも目を向けよう。問題点を把握した上で、その問題点を克服する方法を考へなければならない。IT社会が楽しいものであるためには、不快は取り除かなければならない。
 そのための問題整理として、この本は役に立ちさうである。




 

ITホワイトボックスが面白い

 今さらだが、NHK教育で毎週木曜日に放送されてゐる「ITホワイトボックス」といふ番組が面白い。
 昨年放送されてゐたものの再放送らしいが、それも2010年2月いつぱいで終はつてしまふ。番組を見損ねた人は、番組とほゞ同じ内容のものが書籍になつて発売されてゐるのでそちらを読んでみたらいい。非常によく出来てゐる。

 この番組の面白いところは、「ITの基礎の基礎」を教へてくれるところだ。
 私は「インターネットの基本」が知りたくて、今までさまざまな書籍やTV番組を見てきたが、いづれも満足させてもらへるやうなものはなかつた。
 だいたいの書籍やTVが「インターネット(またはIT)の基本」と言ふと、WWWの説明から始まり「これはワールドワイドウェブ、つまり世界中に張られた蜘蛛の巣といふ意味です」などといふ解説であつたり、DNSの説明であつたり、あるいはブラウザソフト(InternetExplorer)の説明であつたり、さらにはホームページの見方(検索エンジンの使ひ方)の説明であつたりする。

 そんなのは「インターネットの基本」ではない!私が聞きたいのは、もつとずつと基礎の基礎のこと。例へば、なぜ米国のホームページが日本で見られるのか。物理的にデータがどのやうな経路を辿つてくるのか。
 さうした「基礎の基礎」に答へてくれる本やTVは今まで一つもなかつた。この「ITホワイトボックス」が初めて基礎中の基礎ともいふべき疑問に答へてくれた。太平洋に日米間を結ぶ巨大な海底ケーブルがあることを実際に映像で見せてくれたのだ。

 かうしたことは誰も皆当たり前のことすぎると思つてゐるのか、質問もしないし、本の著者も書かない。だが「インターネットの基本を教へます!」と謳つてゐる本に、必ずと言つていいほどブラウザソフトの説明が書かれてゐたりするのに私は毎度がつかりしてきた。だつて、ブラウザソフトの説明はインターネットの説明ではない!

 その点、まさに「基本の基本」を教へてくれるこの番組の満足度はかなり高い。
 番組は電子メール編、インターネット編、モバイル編、PC編の四つに分けて放送されてゐるが、いづれも本当の基本を教へてくれてゐる。例へばPC編では、よくある初心者向けPC講座番組のやうな、ワープロソフト(Word)の使ひ方だとか、ファイルの保存の仕方だとか、画像の取り込み方だとかいつた、さういつた具体的PCの使ひ方などは一切紹介されない。この番組で取り上げられるのは、「メモリー」、「クロック」、「データバス」、「マルチコア」などといつたキーワードを中心とした、本当のPCの基本的なことがらである。電子メール編でも、もちろんメールソフトの説明やメールの書き方(マナー)などといつたことではなくて、@(アットマーク)の歴史にまで遡つて教へてくれたりする。

 教授陣がまたすごい。日本のインターネットの祖ともいふべき慶應大学の村井純や元マイクロソフトの古川享など錚々たる顔ぶれが毎回ゲストとして登場する。

 かういふ番組、かういふ本を待つてゐた。ITに疎い私には非常にためになつた。普段、ネットやPCのソフトなどを使ひ慣れてゐる人でも、意外とインターネットの基本を知らなかつたりすることもあるのではないだらうか。
 もうすぐ番組が終はつてしまふのが残念だが、続編を期待したい。

 本のタイトルが「ネットに弱い」とか「パソコンに弱い」などとなつてゐるが、これはネットを使つたことがないとかネットを使ひ慣れてない人、といふ意味ではない。ネットはバリバリ使ひこなしてゐるけど、意外とネットの基礎の基本みたいなことは分かつてない人、といふことだ。この二冊は私と同じさういふ人たちのための最高の教科書になるだらう。

NHK ITホワイトボックス 世界一やさしいネット力養成講座 「ネットに弱い」が治る本 (講談社 Mook)NHK ITホワイトボックス 世界一やさしいネット力養成講座 「ネットに弱い」が治る本 (講談社 Mook)
(2009/09/29)
NHK「ITホワイトボックス」プロジェクト

商品詳細を見る

NHK ITホワイトボックス 世界一やさしいネット力養成講座 「パソコンとケータイに弱い」が治る本 (講談社 Mook)NHK ITホワイトボックス 世界一やさしいネット力養成講座 「パソコンとケータイに弱い」が治る本 (講談社 Mook)
(2009/12/18)
NHK「ITホワイトボックス」プロジェクト

商品詳細を見る


ITホワイトボックス
NHK教育テレビ 毎週木曜日午後11:30~ 
再放送 毎週日曜日午後2:00~