暫定龍吟録

反便利、反インターネット的 This blog has not been updated since 2017

タグ "広辞苑" の付いた記事

滑舌がある

 「滑舌がある」とは、また妙なタイトルだと思つた読者諸氏もをられるかもしれない。
 「滑舌が良い」、「滑舌が悪い」とは言ふが、「滑舌がある」とは普通言はない。

 この「滑舌」といふ言葉、今では日常的によく聞く言葉だが、どうやら昔からある言葉ではないらしい。
 2002年発行の『明鏡国語辞典』には「滑舌」は載つてゐない。『広辞苑』も第五版までは収録されてゐない。第六版新収の言葉である。
 その『広辞苑第六版』によれば、「滑舌」とは、

【滑舌】
(もと放送業界の用語)はっきり発音するための舌や口のなめらかな動き。


とある。
 「滑舌」は業界用語だつたのか。
 しかし、思ふに「カツゼツ」といふ言葉そのものが滑らかには言ひにくい。こんな言ひにくい言葉はたしかに昔からはなかつたであらう。放送業界の誰がこのやうな言葉を作つたのだらうか。

 ためしに滑舌よく「カツゼツ」と十回言つてみてください。

 『広辞苑第六版』には「滑舌」がある。新語の収録には慎重な『広辞苑』だが、このやうに、もうかなり世間一般に普及してゐる言葉は積極的に収録していいと思ふ。
 世間に流通してゐる日本語の意味を明らかにすることは、国語辞典の一つの重要な使命でもある。



こちらから人気ブログ→ランキング

新潟県出れ

 1月11日、『広辞苑第六版』が発売された。
 それで、今日、早速、このやうなニュースが新聞に出てゐた。

 

広辞苑:「在原行平」伝説の記述に誤り
 広辞苑の「芦屋」の項に「在原行平(ありわらのゆきひら)の伝説の舞台」などと誤った記述のあることが分かった。岩波書店(東京都)は修正を検討する。

 広辞苑は今月、10年ぶりに改訂され、第6版が出版された。この中で「芦屋」を「兵庫県南東部の市」「在原行平と松風・村雨の伝説などの舞台」とした。ところが、行平に愛された姉妹を描いた能「松風」の舞台は、須磨(神戸市)。芦屋にゆかりがあるとされる弟・業平(なりひら)と混同したとみられる。誤表記は1955年の初版からという。

毎日新聞 2008年1月21日 東京朝刊

http://http://mainichi.jp/select/wadai/archive/news/2008/01/21/20080121ddm041040025000c.html



 しかし、私はこれよりも早い1月17日に、早速、新・広辞苑の中に誤りを見つけてしまつたのだ。
 断つておくが、私は辞書マニアでもなければ、粗探しを趣味とする者でもない。ただ、誤字の方から目に飛び込んできたのだ。

 今回の新版(第六版)では、【ジャイアント馬場】といふ項目が新たに収録されたとして、発売前から少し話題になつてゐた。それで早速、新版で【ジャイアント馬場】を引いてみたら、

プロレスラー。本名、馬場正平。新潟県出れ。(後略)



と書いてある。

新潟県出れ。

 はい、新潟県を出て行きます。

 私は一目、「新潟県生れ」の間違ひだと思つたが、すぐに、いや天下の広辞苑が間違つてゐるはずはない、と思ひ返した。それほど、私の中での広辞苑に対する信頼は厚かつた。もしかしたら、「出れ」と書いて「うまれ」と読むんじやなからうか…。
 しかし、【長谷川町子】は「佐賀県生れ」と書いてあるし、【岡本太郎】は「東京生れ」と書いてある。あゝ、やはり、「出れ」は「生れ」の間違ひなのだ。

 岩波書店辞典編集部さま、大変申し訳ありませんが、間違ひを見つけてしまひました。しかし、私の広辞苑に対する信頼の度合はつゆも変はりませぬ。広辞苑第六版、これから末永く愛用していきたいと思つてゐます。