暫定龍吟録

反便利、反インターネット的 This blog has not been updated since 2017

2009年04月の記事

新常用漢字と代用字の問題

 長らく1945字であつた常用漢字に、2010年、新たに191字が追加される予定になつた。

 この件に関し、文化庁がパブリックコメントを募つてゐるが、すべての世論を聞き入れるのは難しいだらう。このやうな改正の動きがあるときは、必ず、「この漢字は入つてゐるのに、なぜこの漢字は入つてゐないのか」といつた声が各方面から上がるからだ。さういつた声をいちいち拾つて、すべて取り入れるのは至難のことである。

 常用漢字の改正には、さまざまな問題が山積してゐる。
 「常用漢字は規範なのか」といつた「そもそも論」に始まり、常用漢字の数は減らすべきか増やすべきか、どのやうな基準で採用すべきか、字体の統一の問題、さらには文字コードの問題(これはかなり厄介)なども絡んでゐる。

 さういつた厄介な問題の数々に首を突つ込むのは、私はよしておかう。
 そこら辺の議論はこちらのブログなどに詳しい。

「もじのなまえ」

 で、私は、さういつた新常用漢字問題を扱ふブログやサイトたちでも、あまり取り上げられてゐない問題について取り上げてみたいと思ふ。

 常用漢字を追加するにあたつてぜひ考へてもらひたい問題、それは「代用字」の問題だ。「書きかへ字」と言つたり「代用表記」と言つたりもする。

 少し漢字に詳しい人なら知つてゐると思ふが、「書類せんかう」、「せんかう委員会」などといふときの「せんかう」は漢字では「銓衡」と書く。これが本来の表記だ。ところが常用漢字表に「銓」も「衡」も入つてゐないために「選考」といふ字を“代はりに”当ててゐる。似たやうな意味の漢字を当ててゐるわけだが、「選び考へる」では、「銓衡」が本来持つ「はかり・はかる」の意味合ひが抜けてしまつてゐる。
 「代はり」はあくまでも「代はり」である。本来の正しい字があるんだけど、今は一時的にこの字で代へてゐます、といふこと。ところが長いこと「代はり」の字が使はれてゐる間に、本来の字が忘れられてしまつてきてゐる。

 「人類の叡智」は「英知」と書かれ、「聯絡ください」は「連絡」と書かれる。なにか幼稚な気がしないだらうか。もし何も感じないのであれば、それは生まれたときから幼稚な表記の方を見慣れて育つてきてしまつたためだ。代用字の例は挙げれば他にも枚挙にいとまがない。

 常用漢字を見直すのであれば、かうした代用表記をしなくてすむやうに、「叡」や「聯」といつた文字を入れていくべきではないだらうか。「叡智」や「聯絡」は日常よく使はれる言葉だし。
 常用漢字は小中学生で教はる漢字。小中学生に「れんらく」といふ日常語を教へられないのは問題があるだらう。だからこそ、常用漢字表を改正するなら、この際大幅に文字数を増やしてでも、子どもたちに(大人たちにも)正しい表記を教へるべきではないだらうか。
スポンサーサイト