暫定龍吟録

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2010年06月の記事

憎むべきは人をオモチャと見做す遊び感覚

首都大生の「ドブス写真集」動画が騒動に 大学は事実把握、「大変遺憾」 - ITmedia News

今回の首都大生たちをリンチするのは、彼らと同じ穴の狢なのではないか - 見たり聞いたりしたこと

 首都大学東京の学生が起こした問題がネット上で話題になってゐる。どういふ事件であるかについては、一つ目のリンク先を読んでもらひたい。その事件に対して意見を述べた二つ目のリンク先のブログにも多くの賛否両論が寄せられてゐる。

 この件で二つの出来事がある。一つは、件の大学生が起こした事件。もう一つは、その事件に対して2chねらーが行った「祭り」「晒し上げ」である。
 二つ目のリンク先のtaitiro氏は、この二つを行った人はどちらも同じ穴の狢ではないか、と述べてゐる。そしてtatitiro氏は思想やら芸術論の観点から、この二つの出来事に対して考察を加へてゐるのだが、私はむしろ、これら二つの出来事が最低なのは、そこに高邁な思想も芸術も存在しないからなのではないか、と思ってゐる。
 そこに高邁な思想なり芸術論なりが存在するのならまだ救はれるのだ。だが実際には思想もへったくれも存在しないからtaitiro氏の説は虚しいのだ。

 件の大学生は決して「ブス」が憎いわけではない。憎くてやったのならまだ救はれるのだ(良くないけど)。さうではなくて、大学生たちにとって「ブスな女」はたゞの面白さうなオモチャでしかない。かういふことをしたら「ブスな女」がどういふ反応を示すか面白さうだからやってみようぜ、といふノリで今回の件を起こしてゐる。

 同様に「祭り、晒し上げ」を行った2chねらーたちの多くは、この大学生のことが憎いわけではない。彼らの多くにとって、それはたゞの「メシウマ」のタネである。
 以前、どこかの大学教授が炎上について「もしも2chねらーたちが正義感から行ってゐるとしたら、」と発言したところ、多くの2chねらーたちが「正義感ぢゃねーよ、面白いからやってんだよ。たゞのメシウマだよ」と反論した。
 だとするならば、今回の件も多くの2chねらーたちにとっては、たゞの「メシウマのタネ」でしかないのだ。

 二つに共通するのは「面白いからやってゐる」といふ動機である。この二つの行ひが救ひやうがなく最低なのは、それが高邁な思想や正義感の下に行はれてゐるのではなく、単に「面白さうだからやってみようぜ」といふ遊び感覚に基づいて行はれてゐるからである。

 はてなブックマークなどにコメントしてゐる人の中には、「目には目を!歯には歯を!被害者の女性の気持ちをこの大学生にも思ひ知らせてやらう」といふ正義感からコメントしてゐる人も少なからずゐるかもしれない。それでも「祭り」や「晒し上げ」には加はるべきではない。なぜなら、その"場"に集まって来てゐる多くの2chねらーたちは、「祭りと聞きつけてやって来ますた」、「なんか知らんけど面白さうだから晒さうぜ」といふ程度のノリでしかないからだ。

 この大学生が最低なのは、被害者の一般女性たちのことを自分たちの「メシウマのタネ」、「面白いコンテンツ」としか見做してゐないところである。一人の感情を持った人間として見てゐない。そして今回の行ひは、それは彼らにとって必要欠くべからざる行ひではなく、やってもやらなくてもどっちでもいいことであり、でもやってみたら面白さうだからやってみようぜ、といふ遊び感覚のもとに行はれてゐるところが救ひやうがなく最低なのである。

 大学生を批判することは悪いことではない。だが、「祭り」や「晒し上げ」は、批判の方法としてふさはしくない。対象がとんずらしてしまった後に参加しても、もう祭りの「叩き」は誰にもヒットしてゐない可能性は高い。さうなるとますますたゞの自己満足のメシウマでしかないことになる。もし「冷静で客観的な自分がこの件について一言言ひたい」と思ふんだったら、掲示板やどこかのコメント欄ではなく、自分のブログに書くべきである。書く場所を間違へると、本人はそのつもりはなくても、はたから見たら「祭り」や「炎上」に加はってゐるたゞの野次馬といふことになる。

 (この記事では法的な犯罪行為については言及してゐないけれども、もしそのやうなことがあったなら、それについてはしかるべき法的処罰がなされるべきだと思ってゐる。)


【関連記事】
大聖堂落書き事件にみる心理(2008/06/30)

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大都会育ちの私が田舎で驚いた3つのこと

 よく田舎出身の人が初めて東京に上京してきた時に「人が多くて驚いた」とか「電車がすぐ来るのに驚いた」などといふ話がありますよね。
 でも、その逆の話はあまり聞かない。東京の人間が田舎に行って「こんなことに驚いた」といふギャップの話があってもいいと思ふんです。
 なので、今日は大都会育ちの私が田舎に行って、こんなギャップに驚いた、といふ話をしたいと思ひます。

其の一:バスが後ろ乗り
 学生時代、大学の仲間と一緒にある田舎へ行ったときのこと。その地元のバスに乗ることになった。私は後ろ乗りのバスが珍しかったが、他の人たちはみな地方出身者だったので慣れた様子だった。バスに乗るときに整理券らしきものが出てきたので、前の人にならってそれを手に取った。手に取ったはいいが、私はずっとその紙片の意味を理解しかねてゐた。何か番号が書いてあるけど、この紙には一体どんな意味があるのか?一日に何人の客が乗ったかカウントするためのものかとも思ったが、それにしては番号の数が小さすぎるやうだった。結局、その紙片の意味はわからず、そのまゝバスに乗ってゐたのだが、私はだんだんドキドキしてきた。だって、まだお金を払ってない!おそらく降りるときに支払ふのだらうが、一体このバスの乗車料金はいくらなのか?あと、さっきから握りしめてるこの整理券はどうすればいいの?記念に家に持って帰っていいの?わからないことだらけで、かなり緊張してきた。
 そしてさあもう降りるよ、といふ時になった。私は意を決して恥を忍んで、隣にゐた優しさうな先輩に「料金はいくらなんでせうか。あと、この券はどうすればいいんでせうか」と聞いた。「630円だよ。あゝ、その券はお金を入れるところに一緒に入れればいいんだよ」と優しく教へてくれた。
 私は小銭が無かったので、千円札で払ふことにした。ジャラジャラとお釣りが出てきたので、それを握りしめて降りようとしたら、「ちょっと」と運転手に呼び止められた。ドキッ!よく見たら手に握りしめてゐたものはお釣りではなくて、1000円がたゞ両替されたものだった。東京のバスでは千円札を入れたらお釣りだけが出てくる。田舎のバスはなんと不便なのだ。私は危うく無賃乗車するところだった。

其の二:電車に乗るのに時刻表を調べてから出かける
 これはもう、田舎の家に行くとだいたいさうなので、最近は驚かなくなった。
 私は山手線沿線に住んでるが、山手線に乗るのに時刻表を調べてから家を出たことなど一度もない。そもそも家に時刻表がないが。自分が駅のホームに行ったときに入って来た電車に乗るだけである。大体、山手線の時刻表なんて存在するのだらうか?そんなものがあったとしても当てにならないと思ふが。

其の三:タクシーで「駅まで」
 これも実際に過去に経験した話。
 ある地方都市の知人宅に遊びに行ったのだが、帰るときにタクシーで駅まで送ってくれることになった。私はタクシーは大通りに出て拾ふものだと思ってゐたが、その知人はタクシー会社に電話して家までタクシーを呼びつけた。そのことだけでも驚いたのだが、真に驚くことはその後に待ってゐた。一緒にタクシーに乗り込んだ知人が運転手に「駅まで」と言ったのだ。驚いたことには運転手も普通に「はい」と返事してタクシーを走らせ始めた。
 地域間ギャップの面白さを垣間見た瞬間だった。田舎では「駅まで」で通じるのだ。なんと素晴らしいことか。何駅か、といふ駅名は言はなくてよい。なぜなら駅はその街に一つしかないから。
 もちろんこれは東京では考へられないことだ。東京でタクシーをつかまへて「駅まで」なんて言ったら、タクシーの運転手に怒られるだらう。
 私の家は、家から徒歩10分の圏内に電車の駅が7駅ある。もし自宅にタクシーを呼び寄せて、「駅まで」なんて言ったら、確実に「どこの駅ですか」と言はれるのは間違ひない。


 以上、3つ。都会と田舎、どちらが良くてどちらが悪いといふ話ではない。かういふギャップが存在するのが面白い。田舎のバスに乗ったときはちょっと緊張したけれども、かういふ異文化に出会へるのが旅行の醍醐味だ。全国どこに行っても東京と同じやうな仕組みだったら逆につまらないだらう。

 田舎に行ったときの失敗談などはまだまだあるので、おひおひブログに書いていかう。




2010FIFAW杯みんなの日本代表成績予想

 2010FIFAワールドカップ南アフリカ大会の開催に合はせて日本代表成績予想や優勝国予想を楽しまうと思ってゐる。

 みんながどのやうに予想してゐるのか気になるが、いろいろ調べてみたところ、個々人のブログで好き好きに予想してゐる人はゐるやうだが、まとまった予想のアンケートをとってゐるサイトは意外に少ないことが判った。  特に今度のW杯は、日本代表チームの前評判が低いこともあって、日本国内ではやゝ盛り上がりに欠けてゐるやうだ。

 そんな中で、W杯における日本代表の成績を予想してゐるアンケートをいくつか見つけてきた。


 まづは、Potoraといふアンケートサイトから。

wcpotora.png


 このアンケートは非常に不可解である。私が見た時点で186人が投票し83%が「予選敗退」と回答してゐる。このアンケートは2010年5月25日に作成されてゐる。その時点では当然、日本代表チームは本大会への出場は決まってゐる。本大会へは当たり前だが予選を突破したチームしか参加できない。これはおそらくアンケート作成者のミスだらう。「グループリーグ」のことを「1次リーグ」と言ふことはあっても「予選」とは言はない。


 次に、「どうなのねっと」といふアンケートサイトで行はれてゐた予想。

wcdounanonet.png


 こちらは私が見た時点で3000人以上の人が回答してゐるから、かなり信頼できる統計結果だと思ふ。
 ご覧のやうに圧倒的多数の76.8%、全体の約4分の3の人が「グループリーグ敗退」と予想してゐる。なほ、2番目に多い予想は「ベスト16(10.9%)」で、その次が「優勝(6.8%)」となってゐる。これは「予想」といふよりも「期待」の表れであらう。


 最後は、Yahoo!JAPANの「ズバリ予想」から。

wcyahoo.png


 こちらも私が見た時点で3000人以上の大勢の人が回答してゐる。こちらのアンケートではもう少し詳しく「グループリーグ敗退」を「勝ち点2以上でグループリーグ敗退」と「勝ち点1以下でグループリーグ敗退」の二つに分けてゐる。「勝ち点1以下でグループリーグ敗退」と予想してゐる人が一番多くオッズは1.6倍となってゐる。「勝ち点1以下」といふのは「1分2敗」か「3敗」のことなので、日本代表に対してかなり厳しい予想をしてゐる人が多いことが分かる。全体では「グループリーグ敗退」と予想してゐる人が率に直すと約78%にのぼる。


 かうして見てみると、やはり日本代表のグループリーグ敗退を予想してゐる人が多いやうだが、では、実際には日本代表チームはグループリーグ3試合をどのやうな成績で終へるだらうか。仮に敗退すると予想しても、1勝1分1敗の勝ち点4で敗退するのと3敗の勝ち点0で敗退するのとでは、随分意味が違ふやうな気がする。前回のドイツ大会では日本は1分2敗だった。同じグループリーグ敗退で帰ってくるとしても1勝して帰ってくるのと1つも勝てずに帰ってくるのとでは日本国民の感情も違ってくるのではないだらうか。

 日本は実際に、カメルーン、オランダ、デンマークとの3試合でどのやうな成績を残すのか。グループリーグ3試合の結果は次の10通りのどれかになるはずである。


グループリーグの成績勝ち点
3勝9
2勝1分7
2勝1敗6
1勝2分5
1勝1分1敗4
1勝2敗3
3分3
2分1敗2
1分2敗1
3敗0


 「1勝2敗」と「3引き分け」が同じ勝ち点3であることに注目してほしい。「3引き分け」といふと、1試合も負けなかった、カメルーン、オランダ、デンマークといふ世界の強豪に一歩も引けをとらなかった、と立派な感じがするが、「1勝2敗」と同じ価値しか持ってゐないといふことがわかる。
 では、日本はこの10通りの中でどのくらゐの成績を収めれば決勝トーナメントに進出できるのか。それを言葉で表すとこんな感じになる。


グループリーグの成績決勝トーナメント進出の可能性
3勝安泰
2勝1分安泰
2勝1敗ほゞ安泰
1勝2分安泰とは言へない
1勝1分1敗微妙
1勝2敗かなり微妙
3分かなり微妙
2分1敗ほゞ敗退
1分2敗敗退
3敗敗退


 「1勝2分」だと他の国の成績次第では「安泰とは言へない」ものの確率的には決勝トーナメントに進める確率はかなり高い。「1勝1分1敗」で微妙。「1勝2敗」や「3分」といふ成績では決勝トーナメントに進める確率はかなり低いと言っていいだらう。

 日本代表を応援してゐるが、「期待」と「予想」は違ふ。グループリーグ敗退を予想するのは簡単だが、成績の内訳までピタリと当てるのは難しさうだ。

 皆さんはどう予想しますか?


(↓投票締め切り2010年6月24日まで)



あの有名な絵画を3Dで見ると?

 ある動画サイトで見て面白かったので紹介。





 なかなかすごい技術ですね。

Famous paintings in 3D - Snotr

ゴキブリが嫌われる5つの理由

 あなたがこの世で一番嫌ひな虫は何ですか?

 この問ひに対する答へは人によってさまざまだらうが、もし日本国民全員にこのアンケートが行はれたら、あの虫が一位になるに違ひない。さう、国民的不人気生物、「ミスターG」こと「ゴキブリ」である。

 ゴキブリは、なぜかくも人間に嫌はれるのか?どうして他の虫に比べて、ゴキブリだけがそんなに嫌はれるのか?
 その理由を少し真面目に考へてみた。

理由1:鳴かない
 コオロギは、パッと見、ゴキブリと見間違へさうなほど色も大きさも外見がそっくりである。コオロギが人間に嫌はれないのは、その美しい鳴き声が珍重されてゐるからである。ゴキブリも「リーリーリー」とか「スイッチョン」とか鳴けばよかった。

理由2:黒い
 テントウムシが人間に殺されないのは、その背中の美しい模様が珍重されるためである。チョウとガの違ひを考へれば分かりやすい。チョウは好かれガは嫌はれる。違ひは羽の紋様の美しさの違ひだけである。ゴキブリももっと鮮やかな紋様を持ってゐればよかった。「ナナホシゴキブリ」「モンシロゴキブリ」・・・微妙か。

理由3:動きが速すぎる
 「漆黒の彗星」の異名を持つ、あのカサカサとした素早い動き。同じく黒くて大きいカブトムシやクワガタが嫌はれないのは動きが遅いからである。1時間後に見てもほとんどその位置から動いてゐないほど動きが遅ければ、誰も慌てて殺さうと思はないだらう。「飛ぶから」といふ理由を挙げる人もゐるが、カブトムシやクワガタも飛ぶ。飛ぶ虫は多い。

理由4:不潔なところにゐる
 これはハエが嫌はれる理由と同じ。汚れたところやゴミ置き場など不衛生なところによく現れるので、イメージが悪い。ゴキブリも川の清流にしか現れなければ、たとへあの外見でも、こゝまで嫌はれなかっただらう。

理由5:生命力が強すぎる
 人類が誕生するはるか昔の時代から、その姿を変へずにずっと生きてきたゴキブリ。ほゞ何でも食べる雑食性。殺虫スプレーをかけても簡単に死なない抵抗力。ホイホイに捕まってもそこで産卵し子孫を残さうとする繁殖力。どれをとってもとにかく生命力が強すぎる。もっと、か弱き虫で絶滅危惧種に指定されるほどだったら、人間も見つけ次第殺したりはしないだらう。


 以上、5つが私が考へるゴキブリが人間に嫌はれる理由である。

 この5つの理由にもう一つ付け足すとすれば、「家の中にゐる最大サイズの虫だから」といふものがある。ゴキブリのことを「ホームステイ」と呼んでる人もゐるらしい。都会の家では家の中に虫がゐない状態が標準なので、彼らは招かれざる客である。だが田舎では、家の中にもっと多様な虫がゐるので、この理由は必ずしも当てはまらない。

結論
 ゴキブリは、数が減って絶滅危惧種に指定され、川の清流に住み、のろのろと動き、背中に鮮やかな紋様を持ち、リーリーリーと鳴けば、人間に嫌はれない。
 (もはや、さうなったらゴキブリではない気もするが・・・)




鳩は降りました



 
 本日、鳩山首相、辞任。

中国ネット掲示板の翻訳は日中相互理解に寄与するか

 迷路人氏(安田峰俊)の『中国人の本音』を読む。

中国人の本音 中華ネット掲示板を読んでみた中国人の本音 中華ネット掲示板を読んでみた
(2010/04/20)
安田 峰俊

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 私はこの人のブログ「大陸浪人のススメ ~迷宮旅社別館~」をかなり前から知ってゐる。

 このブログは、中国のネット掲示板を2ch風に翻訳してゐるものだ。初めは意味が分からなかった。なぜ2ch風なのか。迷路人氏は2chが好きなのか?私は、2ch=ネット右翼=反中、といふイメージがあったので、迷路人氏のスタンスが分からなかった。
 しかし迷路人氏はどう見ても中国語には堪能だし、中国のことについても詳しいし、中国嫌ひだとは思へない。それをわざわざ反中な人が多い2chの体裁で書くのにはどういった意図があるのか?普通に訳せばいい、何も2ch風に訳す必要はまったくない、さう思ってた。

 しかしこのブログを読むに連れて、そしてまたこの度、そのブログを元にした書籍『中国人の本音』を読んでみて、何となく迷路人氏の意図が分かったやうな気がした。
 普通に訳しても誰にも読まれない。あへて2ch風に訳すことで、偏狭なナショナリズムに凝り固まった2chねらーたちに、中国の若者たちも自分たちと同じやうな感性を持ってゐるといふことを知らせたかったのではないだらうか。

 NAVERといふ韓国IT企業のネットサービスが最近、日本で人気が出てゐる。検索エンジンはまだまだ人気がないが、NAVERまとめNドライブといったサービスが評判が良い。
 ところで、このNAVERが昔、日韓翻訳掲示板といふサービスを提供してゐた。私がそれを見たのはもう5年以上前、2000年代前半の頃のことである。NAVERはおそらく、若者同士の日韓友好を促進する目的でこのサービスを始めたのかもしれないが、実際、中を覗いて見ると、そこは罵倒、嘲笑合戦の場だった。もう荒れに荒れまくってゐて、こんな掲示板は早く閉鎖した方がいいのでは、と思った。
 言語の壁を越えて翻訳することが必ずしも相互理解には繋がらない、と痛感した例だった。

 しかし管理されてゐない掲示板と、迷路人氏といふ管理人がゐるブログとは違ふ。管理されてゐなければ、もちろん荒れる可能性は高いだらう。
 迷路人氏は独特のバランス感覚を持ってゐる。中国を必要以上に良く言ふわけでも悪く言ふわけでもない。中国の良いところも悪いところもバランスよく紹介する。といふか、中国のネットの世界をありのまゝに紹介するやう、努めてゐるやうだ。

 面白いのは「2ch看日本」といふ、「大陸浪人のススメ」と対の関係をなすブログが中国にも存在するといふことだ。このブログは日本の2chを中国語に翻訳して中国人に紹介してゐる。そしてこのブログの管理人の中国人と迷路人氏は知り合ひなのださうだ。
 2chの文章を中国に中国語で紹介する意義は大きい。2chが日本のネット文化だ、と言ったら言ひ過ぎだが、大きな一角であることは間違ひない。
 ともに、それぞれの国の代表的なネット掲示板を翻訳してゐるのが特徴である。翻訳ブログといふのは他にも存在するので、決してこの二つのブログが日本と中国をそれぞれ代表してゐるわけではないが、しかしこの両ブログの人気ぶりを考へれば、この両ブログがそれぞれの国の若者に与へてゐる影響はそれほど小さいものではないだらう。

 たしかにかうしたブログを読むと、中国人に対するイメージが変はることもある。今まで日本の(日本語圏の)ネット社会しか知らなかった者にとっては、世界が拡がるといふことにもなる。
 これから日中の両国語を解する人が増えていけば、かうした翻訳ブログも増えていくだらう。
 たゞ、その時に一つ心配なのは、恣意的な翻訳、あるいは紹介がなされる虞だ。つまり、今いくつかある2chのまとめブログのやうに、管理人が自分のイデオロギーや嗜好によって、特定の思想傾向の意見ばかりをピックアップしたり、気に入らない意見は意図的に排除したりする編輯がなされる心配だ。
 ほとんどの日本人は中国語は解らないから、元スレを辿って確認するなんてこともできない。翻訳ブログの管理人が翻訳して載せてくれてゐる内容をそのまゝ信じるしかない。
 つまり、ほんの一部の語学能力を有する者が国レベルでの情報操作を行ったら恐ろしいだらうと思ふのだ。中国の掲示板の中から反日的な発言ばかりをチョイスして紹介したら、それを見た日本の若者は中国人は皆反日的である、と思ってしまふかもしれない。

 この本を読んで、さまざまな現代中国のネット事情などを知ることができて興味深かった。特に「憤青」と呼ばれる愛国主義的な若者たちの存在は、いろいろと考へさせられる。日本の「ネット右翼」、韓国の「ネチズン(あるいはVANK)」とどこが共通してゐてどこが違ふだらう。「80后」との関係は?「憤青」はこれからますます増えていくのか、それとも一時代的なものなのか。

 「イマドキ」の「リアル」な中国人の本音に興味がある人には格好の一冊だと思ふ。中国あるいは中国人に対するイメージが少しは変はるかもしれない。

 これからの時代、日中の相互理解は進むと思ひますか?