暫定龍吟録

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2016年04月の記事

マイナンバーと被災者台帳と熊本地震

 NHKでこういうニュースを見た。

役場被災で「り災証明書」発行できず 益城町
4月25日 19時09分

住宅に被害を受けた人たちが生活再建の支援金や保険金などを受け取るためには、全壊や半壊など被害の程度を証明する、自治体発行の「り災証明書」が必要です。また、県営住宅や、ほかの自治体が提供を申し出ている施設に入居を希望する場合にも、り災証明書が必要なケースがあるということです。
しかし、益城町は震度7の揺れを2回観測するなど一連の地震により役場庁舎が大きく壊れて中に入れず、住民基本台帳のデータを扱う端末が使えないことなどから「り災証明書」の発行ができないということで、被災した住民からは、いつになれば発行できるようになるのか、問い合わせが相次いでいます。


 これは、ちょっと不思議なニュースだ。

 2016年4月に起きた熊本地震と2011年3月に起きた東日本大震災は、たったの5年しか離れてないが、この5年の間に被災者を巡る制度的環境は二つの点で大きく変わっている。

 2016年から、マイナンバー制度が始まった。

 マイナンバーの3つの大きな柱は、「税」と「社会保障」と「災害対策」である。おそらくマイナンバーに関心を持っている人は、一番に税、二番目に社会保障の問題に関心を寄せているだろうが、災害対策のことを忘れてる人も多いのではないだろうか。災害対策は立派なマイナンバーの三本柱の一つである。

 被災者台帳の方は、すでに昔からあった。しかし東日本大震災の教訓を踏まえて災害対策基本法が一部改正され、本格的に整備されることとなった。
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内閣府防災情報のページより)

 被災者台帳があれば、援護の漏れ防止、迅速な対応、被災者の負担軽減、的確な援護実施が可能だと言われている。また、各部署での情報の共有により、避難所ごとに支援物資が偏る、などといった問題も解決されるだろう。

 そして、マイナンバーと被災者台帳の二つは連携することになった。マイナンバーを被災者台帳を作成するために用いてよいことになった。内閣府防災のページには、「罹災証明書の添付を不要とする運用も可能」と書いてある。

 つまりマイナンバーを使えば、被災者への迅速な支援が可能なはずなのである。そもそもマイナンバーの「災害対策」の項は被災者生活再建支援金の支給をメインに謳っている。

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内閣官房のホームページより)

 熊本地震は日本のマイナンバー制度が始まってから、初めての大きな災害だった。

 避難所ごとに避難者たちがマイナンバーを申告する。そのことによって、避難所にいる人々の人数だけでなく、年齢構成や性別割合までが迅速に把握でき、被災者台帳が作成される。そしてその台帳を元に、適切な支援物資の配給や支援金の分配が行われる。被災者たちが過酷な避難所暮らしの中で罹災証明書を用意する、などという大変な手間も省けるようになった。

 こういう時にマイナンバーを使わないでいつ使うのか。

 マイナンバーはこのような時のためにある。

 私は被災地に住んでいないので、救援、支援の状況が現在どのように進んでいるのか分からないが、おそらく、マイナンバーと被災者台帳のおかげで、東日本大震災の時よりずっとスムーズに迅速に進んでいるのだろうと思う。
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公共料金はなぜオンラインで支払えないのか

 この記事には答えは書いてありません。タイトルで終わりです。

 人間、時に、素朴で巨大な疑問を抱くことがある。すごく素朴な疑問なのに長年答えがわからない疑問。みなさんにはありますか?私は幾つかあります。その内の一つが、「公共料金はなぜオンラインで支払えないんだろう」という疑問です。そんなことはググればすぐに分かるんじゃないか?、と思うでしょう?



 公共料金はなぜオンラインで支払えないんだろう?もう長年にわたって抱き続けている疑問だが、未だに答えが分からない。

 これだけ何もかも「ネット化」している時代に、なぜ公共料金はオンラインで支払えないのか。

 私はある時、あまりにも気になって仕方なくなり、ネットで検索して調べてみた。きっと同じような疑問を持ってる人は他にもいっぱいいて、その内の誰かがヤフー知恵袋のようなところで質問しているのではないかと思ったのだ。

 しかし、驚くべき事態が待っていた。なんと!…無かった。「公共料金_オンライン_支払い」など、ありとあらゆる言葉で検索をかけてみたが、一件もそのようなことを解説しているサイトも質問を発しているサイトも見つからなかった。そのような疑問の「つぶやき」すら無かった。

 ここで、新たな巨大な疑問が生まれた。それは、「どうして誰も、公共料金がオンラインで支払えないことに疑問を抱いていないのか?」という疑問だ。

 即ち、
第一の疑問:公共料金はなぜオンラインで支払えないのか?
第二の疑問:なぜ、公共料金がオンラインで支払えない理由を誰も問うていないのか?
という二つの疑問ができた。

 そして、私の中では、元々あった第一の疑問よりも、むしろ第二の疑問の方が日増しに大きくなっていった。

 もちろん、世の中の人々の関心は人それぞれで、公共料金の支払い方法なんかに興味がない人がたくさんいるのは分かる。そんなことより、ゲームやアニメに関心がある、政治の問題のほうが、という人は多いだろう。

「それは、やはり皆、現状の支払い方法に特に不満がないからじゃないですか?」

と言うのも分かる。現状に不満を持っていない人が多いであろうことは私にも想像はつく。

 でも、日本に一人ぐらい、このことに疑問を持つ人がいてもよいではないか。別にオンラインという選択肢があってもよいではないか。

 些細なことと言えば些細なことだが、しかしそんなにマニアックな話だとも思わない。一部の人にしか関係のない話、というわけでもない。公共料金の支払いなんて全国の大部分の人に関係のある話なのに、どうして誰一人、疑問の声を上げていないのか。

 「セキュリティ上の理由」とか「犯罪抑止のため」といった理由だろうか?しかし、これだけネットショッピングなどが普及している現代にあって、この理由は説得力に欠ける。

 繰り返しになるが、「現状の支払い方法に不満がないから」というのは答えになっていない。これだけ、世の中の何もかもが「ネット化」している時代にあって、公共料金だけがオンラインで支払えないというのは、私は「異常」なことと感じる。

 不思議で不思議で、たまに(ごく稀に)夜も眠れない。

 というわけで、理由を御存知の方がいたら、私のツイッターアカウント(@ryutype)宛てにでも教えてください。

「あなたが知らないだけで、本当はすでにオンラインで支払えるんですよ」というのでもいいし、「私もずっと疑問に思ってました!」という共感の声だけでも有り難いです。

お茶汲みは女性の仕事だった! 〜男女雇用機会均等法施行30年〜

 以前、長く職に就けない時期があった。受けても受けても落とされる日々が続いた。

 来る日も来る日もハローワークに通って、求人票を見、少しでも条件が合えば履歴書を書いて送っていた。

 体力に自信がない私は事務の仕事を中心に探していたが、結果は「百戦百敗」という有り様だった。九割は書類銓衡で落とされ、たまに珍しく面接まで行くこともあったが、面接はほぼ100%落ちた。

 ある日、いつものように通い慣れたハローワークに行き、いつものように自分の条件に合いそうな何件かの求人票を印刷して、ハロワ職員のところに相談に行った。

 その日はいつもと違う職員でベテラン風の女性職員だった。

 私「今日はとりあえず、この4件、応募してみようと思うのですが」

 職員はざっと一通り四枚の紙に目を通して、「こっちの2社は応募してみてもいいと思いますよ」

 私「あ、残りの2社はダメですか?」

 職員「うーん、ダメではないですけど、、、」

 私「私には合ってないですか?」

 職員「合ってないというわけではないですが、、、どうしても応募したいですか?」

 私「一応、出すだけ出してみようかと」

 職員「んー、出しても無駄かもしれませんよ。もちろん、どうしても応募したいなら履歴書を送ってみてもいいと思いますし、止めませんけれども」

 私「望み無しですかね?」

 職員「いえ、ほら、ここに『お茶出し』って書いてあるでしょ」 

 確かにその2社は仕事内容の欄に「お茶出し」と書いてあった。私はその職員が「あなた、お茶出しなんかしたくないでしょ?」と言いたいのだと思った。

 私は、それまでの長い無職期間に何度も「無職は仕事を選ぶな!」という言葉を聞いてきた。いろんな人がそう言っていたしネットでもたくさん目にしていた。

「無職は甘ったれてる!」、「選ばなければ仕事なんていくらでもあるはず」、「仕事を選んでるのが悪い」、「今は不況の時代なんだから、『どんな仕事でもやります!』っていうぐらいの意気込みで臨まないと」。

 だから私はお茶出しだろうがなんだろうが自分にできることなら何でもやるつもりだった。それに、お茶出しくらいは、以前の職場でもやっていた。別に苦手ということもない。お茶を淹れるくらい誰にもできることだ。むしろ、主な仕事内容が「お茶出し」なら、それほど忙しい職場ではないのではないか。お茶出しをしていて給料が貰えるなら有り難いくらいだ。

 採用さえしてくれるのならどんな仕事でも頑張ってやるつもりだった。「こんな仕事は自分には合わない」とか、そんなことを言うつもりはまったく無かった。

 だから、

「お茶出しでもなんでもやります!」

とキッパリ言った。

 すると、その職員は

「いえ、そうじゃないんですよ」

と言って、ほんの数秒考えて、

「しょうがないですね。では、これは、あなたにだけはお話ししておきましょう」

と言って、あらためて深く座り直した。

「ご存知の通り、今は雇用にあたって男性、女性ということで差別をしてはいけないことになっています」

「はい」

「ですが、男女雇用機会均等法が施行されてからもう長いこと経ちますが、残念ながら雇用の現場では、男性のみ採用とか女性のみ採用という企業はまだまだなくなっていないのです」

「はい」

「でも法律があるから『男性のみ採用』とか『女性のみ』とは求人票には書けない」

「はい」

「でも事務職では、女性を採用したいという企業は多いんです。だから仕事内容欄に『お茶出し』『お茶汲み』と書いている。つまり、これは暗に『うちは女性しか採る気がありませんよ』っていう意味なんです」

 ええええええええええええええええええ!!!!!

 この時の私のショックは「え」を何回書いても足りない。

 椅子から転げ落ちそうになったと言ったら大袈裟だが、転げ落ちはしなかったが、目の前が真っ白になる感じがした。

 今まで、何十通、何百通と応募してきた求人票の、いったい何割に「お茶出し」と書いてあったのだろう。

 わからない。そこはあまり意識していなかった。

 求人票でよく見るところは、「勤務地」と「仕事内容」の欄。「仕事内容」では、パソコンのスキルとか英語の「TOEIC何百点以上」とか、そういうところを主に見ていた。だが、「郵便物の封入作業」とか「顧客からの簡単な電話対応」とか「書類のファイリング」とか「社内清掃」とか、そういう特別なスキルが要らないものについては、それほど注意を払っていなかった。「電話は苦手」とか「糊や鋏を使うのは苦手」などと言っていたら応募できるものなんてほとんど無くなってしまうからだ。

 だから「中国語での客とのやり取り」とか「◯◯のプログラミング言語が書けること」とか、明らかにスキル的に自分には無理、と思えるところだけを注意して見ていた。

 でも、言われてみれば、「お茶出し」と書いてあった求人票もたくさんあった気がする。過去に応募して落ちてきた求人票は取っておいてないので今となっては分からない。

 ああ。

 そんなことはもっと早く教えてほしかった。

 履歴書一枚書くのでも結構たいへんなのだ。誤字も許されず丁寧に書くから時間もかかるし。それに私のような無職の貧しい人間にとっては、証明写真の700円や封筒の切手代だって結構きびしい出費なのだ。

 それなのに女性しか採用する気のない会社に、少し口角を上げた笑顔の写真の履歴書をひたすら送り続けていた私。がんばって考えて書いた志望動機も経歴も資格も特技も自己アピール欄も、何も読んでもらえず、写真を見た瞬間に「なんだ男か」と言って破り捨てられていたのかもしれない。

「お茶出し」、「お茶汲み」は「女性のみ採用」という意味の符号。覚えておいてほしい。

 本当は「符号」だから、あまり大っぴらにしてはいけないのかもしれないが、今もハローワーク等に通って就職活動をしている人はたくさんいるだろう。そうした人たちに私のような思いをしてほしくないと思い、男女雇用機会均等法施行30年の今日、ここに書いた。