暫定龍吟録

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ヴェイユと現代

simoneweil


 先日、フランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースが亡くなつたといふニュースが世界中に流れ、ネット上でも多くの人が話題にしてた。このニュースを耳にして、亡くなつたことに対する驚きよりも、歴史上の人物と思はれてゐた人が「まだ生きてゐたのか」と驚いた人も少なくなかつたやうだ。無理もない。100歳といふ大長寿だつたのだから。

 ところで、私がこの訃報を聞いて思ひ出したのは、夭逝の思想家シモーヌ・ヴェイユのことだ。
 レヴィ=ストロースが100歳、ヴェイユも今年が生誕100年だから生きてゐれば100歳。同じユダヤ系フランス人の現代思想家で、同じ年に哲学のアグレガシオン(1級教員資格)に合格してゐる。これほどの共通点を持つた人物が他にゐるだらうか。

 それなのに、二人の注目度はあまりに違ひ過ぎる感がある。
 レヴィ=ストロースが、こゝ日本でも構造主義の祖などとして多くの人に認知され話題にされてゐるのに対して、ヴェイユは知る人も少なく話題にのぼることも少ないやうに見える。
 たつたの2ヶ月ほどしか違はずに生まれてきたこの二人の稀有な秀才の注目度の差は何なのか?長生きした者と早世した者との差?それとも思想家としての実力の差?

 34歳の若さで亡くなつた彼女の生涯と思想に、もつと脚光が当たつてほしいと思ふ。いや、むしろ現代の日本社会においては、もつと注目されて然るべきなのではないか。
 格差社会や労働環境の問題、雇用の問題等々、斯様な問題が取り沙汰されてゐる現代日本においてこそ、ヴェイユの思想はもつと顧みられてよい。
 “異端”な感じを匂はせるところが敬遠されるのだらうか。“考へる”だけではなく“行動”の人であつたヴェイユ。その“激辛”も、私には現代に甦るべきスパイスのやうに感じられる。

 できることなら、ヴェイユの思想の一端でもこのブログで紹介したいが、哲学や西洋思想に門外漢の私には到底できない話だ。だからかうやつて、生誕100年のメモリアルイヤーに、レヴィ=ストロースだけでなく、こんな人もゐましたよ、とブログで紹介するのがせめてもの私にできること。

 この記事を読んで、少しでもヴェイユに興味を持つた人のために、本の紹介をしておかう。
 岩波文庫から出てゐる『自由と社会的抑圧』もいいが、個人的には、

 シモーヌ・ヴェーユ『重力と恩寵』春秋社

が装丁も素敵でオススメかと。(と、門外漢の私がオススメするのも変だが)。

 残念ながら私にはヴェイユの思想を読みきるだけの読解力がないので、誰かが彼女の著作を読んですばらしい評論を書き、彼女の名が世の耳目を集めるやうになることを密かに期待してゐるのだが。