暫定龍吟録

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「とめはねっ!」と書道ブーム

 普段、漫画は読まないのだが、書道を題材にしてゐる漫画があると聞いて、『とめはねっ! 鈴里高校書道部』(河合克敏作)といふ漫画を昨年読んでみた。

 感想から先に言ふと、非常によくできた作品だと思つた。この漫画の感想を書いてるブログをいくつか見てみたが、どこでもほゞ絶賛されてゐる。書道に関する知識がまつたく無い人でも楽しく読めるやうになつてゐる。
 「文科系青春コメディー」と紹介されてゐるが、この漫画の作者がどれだけ書道に詳しかつたのか知らないが、武田双雲が監修してゐることもあつてか、書道に関してもかなり踏み込んだレベルの内容になつてゐる。

 私がこの記事を書いてる時点でまだ全巻が刊行されてゐないので途中までしか読んでゐないのだが、作中登場する書の古典は、「九成宮醴泉銘」、「雁塔聖教序」、「牛橛造像記」など。書家としては、王羲之、ほかに米芾や良寛なども登場。また、現代日本の書家として手島右卿、金子鴎亭、飯島春敬など錚々たる名も出てくる。技術的な面に関しては、石川九楊の石川メソッドなども参考にしてゐる。
 恋愛とコメディーを描くだけでも大変だらうに、書に関してこれだけのボリュームをストーリーの中に盛り込んでゐるのは見事といふほかない。
 主人公の少年は展覧会に出す作品に何を書くか考へた末に「雁塔聖教序」を書くことに決めるのだが、こゝらへんのセンスは、やはり監修者の武田双雲のアドバイスが入つてゐるのだらうか。

 この漫画がTVドラマ化される。NHKで2010年1月7日(木)の夜8時から連続6回で放送される。こちらは石飛博光が技術指導にあたつてゐるといふから興味深い。番組のホームページはこちら↓。

 とめはねっ!鈴里高校書道部 | NHKドラマ8

 この漫画を見て考へたのは、今の若い人と書道の関係だ。『とめはねっ!』には書のパフォーマンスをする場面が登場する。最近、民放のTVでも女子高校生が書のパフォーマンスをしてゐるのを見たことがある。パフォーマンスは見た目にも華やかで楽しさうだが、その裏には地味で基礎的な練習が欠かせない。
 かうした漫画やドラマを通じて、若い人のあひだに書道ブームが起こるのは悪くないことかもしれないが、華やかな面ばかり注目されて地味な基礎練習が看過されるやうなブームなら意味がない。そのやうなブームは本当に一時的な盛り上がりに終はつてしまふからだ。しかしこの漫画やドラマをきつかけにして、書道に興味を持ち、堅実に書の道を歩む若い人が増えるなら、それはうれしいことだ。

 今日のこの記事は、中学、高校生など10代の若い人に読んでもらひたいと思つて書いてゐる。そして若い人たちに呼びかけたい。

 ケータイを筆に持ち替へよう!

 今年の年賀の挨拶を「あけおめメール」で済ませてしまつた人も、来年は毛筆の年賀状を書いてみよう。ケータイなどといふつまらない道具の使ひ手は、今の20代の大人たちに任せておけばいい。

 『とめはねっ!』がどれだけ若い人たちに読まれてゐるかわからないが、ケータイを筆に持ち替へるきつかけになるのなら、私はこの漫画を薦めてみようと思ふ。


とめはねっ! 鈴里高校書道部 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)とめはねっ! 鈴里高校書道部 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)
(2007/05/02)
河合 克敏

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