暫定龍吟録

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面接で出あった史上最大の愚問

 「史上最大」といふのはやゝ言ひ過ぎかもしれないが、昔、ある仕事の面接を受けたときに出遭つた本当のお話。

 面接室に入ると、会社の重役らしきをぢさんが3人。私は緊張した面持ちで座る。
 3人の面接官のうち、主に質問をしてきたのはその中の一人だけだつた。いろいろ一通り質問が続いたあと、彼は急にかう訊いてきた。

 「あなたの短所はどこですか?」

 長所を訊いてくるならともかく、短所を訊いてくるとはどういふことだらう。
 その質問に対して私は、かう答へた。

 「強いて言へば、作業に時間がかゝる。行動が遅い、といふところでせうか」

 それまで柔和な表情を浮かべてゐた面接官は、私のこの答へを聞いた途端、一瞬にして表情を曇らせた。そしてかう言つたのだ。

 「それはまづい。うちの会社はめちやくちや忙しいんだ。イベントがある時などは特にてきぱきと動いて捌いてもらはないと困るし、行動が遅いといふのは致命的だなあ」

 信じられないが、面接官は本当にさう言つたのだ。
 私は唖然とした。
 何なんだ、この一連の馬鹿げたやり取りは。まるで、「こゝに落とし穴があるのでこの上を歩いてみてください」と言はれ、私が言はれた通りにその上を歩いて見事に落とし穴に嵌つたら、「あゝ、落ちちやいましたね」と言はれたやうなものだ。

 私は読んだことがないのだが、ひよつとしたら面接のマニュアル本には、かうした愚問に対する上手な答へ方のマニュアルが載つてるのかもしれない。
 しかし例へば、私が何か上手い答へをしたとして、「そんなのは短所ぢやないですよ」とやさしく面接官にフォローしてもらへるやうなことなら、それは本当の短所ではないのだ。また、これは仕事の面接なのだから、仕事に関はる短所を答へるべきで、当然それはどんな答へであれ仕事をする上での重大な支障になるはずである。支障にならないんだつたらそれは短所と言ふほどのものではないのだ。つまり答へを聞いて面接官が困らないやうなことならそれは短所ではなく、短所は何ですかといふ質問に対してきちんと答へたことにはならない。
 それとも私は、仕事とまつたく関係のない短所を答へるべきだつたのだらうか。

 面接官「あなたの短所はどこですか?」
 私「足が短いことですかね」

 私はあの時、一体どう答へるべきだつたのだらう。
 
 数日後にその会社からは不合格通知が届いた。初めから落とすつもりであのやうな質問をしたのかもしれない。にしても、あんな愚問はないと思ふ。

 最近、「nanapi」といふサイトに、

 「あなたの長所と短所は?」という質問への答え方 | nanapi[ナナピ]

といふレシピが載つてゐて人気があつたので読んでみたのだが、結局どう答へればいいのか、私にはわからなかつた。
 
 不況下での就職活動で面接を受けまくつてゐる人も多いと思はれるが、面接を担当される企業の方々には、どうか愚問だけはしないでもらへるやう、切に願ふ。