暫定龍吟録

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センター試験の罪 -見過ごされたもう一つの不公平問題-

 今年も1月16、17日の2日間にわたつて大学入試センター試験が行はれた。年々、少子化してゐるにもかゝはらず、大学入試センターの発表によれば、今年の志願者数は553368人で、前年度より9387人も増えてゐるといふ。相変はらず厖大な数の高校生が受験する大規模試験だ。
 先日、大学入試センターは、2010年度のセンター試験について得点調整は行はないことを発表した。
 得点調整とは何かといふと、センター試験の問題はすべての科目において大体平均点が6割程度になるやうに作られるのだが、科目によつてずれが生じることがある。そこで選んだ科目によつて不公平が起こらないために、同一グループの科目間で20点以上の平均点差が生じた場合は、特別措置として得点調整が行はれることになつてゐる。

しかし、実際に調整が行われることは極めてまれであり、センター試験の歴史の中でも数回しか行われていない。via Wikipedia


 だが、同一年度内での不公平は、このやうにして得点調整といふ形で救はれるからまだいい。大学入試センターは、もつと重大な不公平を見過ごしてゐることを私は声を大にして指摘したいのだ。それは、異年度間不公平だ。
 異年度間不公平とは何かといふと、同一科目において年度による平均点の開きがあること、つまりは受験した年度によつて難易度の違ひがあるといふことだ。
 建前として、平均点が6割(100点満点なら60点)になるやうに問題が作られてゐるにもかゝはらず、年度によつて平均点が70点以上になる易しい年があつたり、50点以下になる難しい年があつたりする。現に、年度間においては平均点差が20点以上の開きが生じることは起こつてゐるのである。
 受験者数が1万人以下の小規模科目でそのやうなことが起こるのはまだしかたないとしても、受験者数10万人以上の大規模科目においてそのやうなことが起こるのはあまりに影響が大きすぎる。

 「ある年の試験の難易度が難しかつたとしても、それは受験者全員にとつて同じやうに難しいわけだから、平等なんぢやないの?不公平ではないのでは?」と思ふ人がゐたとしたら、それは間違つてゐる。世の中には難しい問題を得意とするタイプの人と易しい問題を得意とするタイプの人がゐるのだ。

 同じクラスの同じメンバーの5人が、難しい試験と易しい試験を受けたとしよう。

難しい試験の成績結果
1位:A君
2位:B君
3位:C君
4位:D君
5位:E君

易しい試験の成績結果
1位:D君
2位:A君
3位:C君
4位:B君
5位:E君

 A君は試験の難易度にかゝはらず出来がよいタイプ。
 E君は試験の難易度にかゝはらず出来が悪いタイプ。
 C君は試験の難易度の影響を受けないタイプ。
 B君は試験が難しい方が力を発揮するタイプ。
 D君は試験が易しい方が力を発揮するタイプ。

 このやうなことは普通のどの学校のクラスにおいてもありうる。世の中には大きく別けてこの5通りのタイプの人間がゐるのだ。
 だからこそ、年度によつて試験の難易度が大きく違ふといふことは、B君タイプやD君タイプの人間にとつては致命的な大打撃(場合によつては大ラッキー)となる。 

 2010年度のセンター試験を例にとつてみると、「数学Ⅰ・数学A」が特に難しかつたやうだ。1月22日に発表された中間集計によると、平均点は48.94点。
 以下の表は、過去20年間の数学Ⅰ・数学Aの平均点の推移だ。



 これを見る限り、過去に平均点が50点を下回つたことは一度も無い。といふことは、2010年度の数学Ⅰ・数学Aの試験問題は、史上最難だつた可能性がある。
 こゝで注目してほしいのは、例へば2000年度の平均点は73.68点であり、2010年度の48.94点と比べると実に25点近い点数の開きがあるといふことだ。念を押しておくが、これは最高点と最低点の差ではなく平均点の差である。

 なぜこのやうなことが起こるのか。センター試験の問題はそんなに杜撰な作られ方をしてゐるのか。

 センター試験の問題は、大学教員など400人で構成される「教科科目第一委員会」によつて作成される。出来上がつた問題は、学識経験者など100人によつて構成される「第二委員会」で入念なチェックを受ける。さらにその後、やはり大学教員や学識経験者などで構成される「第三委員会」に回されて最終点検を受けた上で、やつと印刷に回され、試験会場へ送られることになる。
 数百人規模で問題の作成に当たり、しかも3重のチェック体制が敷かれてゐる。

 こゝまで多数の専門家がよつてたかつてチェックを行つておきながら、なぜ年度間の難易度の格差を生じさせてしまふのか。
 科目によつては、過去に異なる年度間において、平均点差が20点、25点どころか40点以上開いた例もある。

 私がこの問題をこゝまで強く糺弾したいのは、多くの受験生にとつて大学入試とは一発勝負だからだ。しかもその一発勝負がその人の今後の人生を大きく左右する。大学入学をきつかけに上京したり環境が激変したりする人が多いことを考へると、多くの人にとつて大学入試は人生の大きな分岐点であると言つても過言ではない。

 その人生を左右する大事な節目の一発試験で、年度の巡り合はせで不運な目に遇つてゐる受験生がたくさんゐるといふ事態は看過すべからざることだ。あと一年早く受験してゐれば、あと一年遅く受験してゐれば、私は合格できたはずなのに。そのやうな受験生は自分が生まれた年が悪かつたと嘆くしかないのだらうか。

 大学入試センターの人に言ひたい。同一年度における科目間の不公平を是正することももちろん大事だが、異年度間の問題難易度の格差をなくすことにも、もつと注意してほしい。ある年の問題が突然難しくなることは、「みんなにとつて平等に難しい」のではないのだから。