暫定龍吟録

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100年先を見据える「HISTROLL」

 今日3月10日は、東京大空襲から63年目の日である。私たち東京人にとつては、決して忘れてはいけない日の一つだ。

 しかし、もう63年も前のことを覚えてゐる人はほとんどゐない。語り継ぎ継承していくべき歴史なのに記憶してゐる人も語り継ぐべき人もなく、年月とともに歴史は風化していく。

 「HISTROLL」といふサイトをご存知だらうか。話題のニュースや事件の経緯や続報を投稿・編輯できるサイトで、「人類の財産となる集合知」を目指してゐるらしい。
 「集合知」といふと、いかにもWeb2.0系らしい感じがするが、このサイトはたゞのWeb2.0系サイトではないやうだ。目指すところのものは、あちこちに散らばつてゐる事件の情報を収集・整理した上で、それらを「100年保存し、人類の資産」とすることだといふ。随分とスケールの大きい目標なのだ。

 HISTROLLといふ名前の由来はサイトには書かれてゐないが、おそらく"HISTORY(歴史)"と"ROLL(記録簿)"を掛けた造語ではないかと思ふ。直訳すれば"歴史簿"とでもいふ意味になるのだらうか。

 事件の記録ならすでにWikipediaにもある、と思ふ方もゐるかもしれない。たしかに多数の人が投稿・編輯できるといふ点でも同じであり、Wikipediaのやうなサイトとの棲み分けも必要になつてくると思はれるが、Histrollの場合は事件専門であり、ネット上だけで話題になつたやうな小さな事件も取り扱つていく方針のやうだ。

 たしかに多くの事件は一時的なブームであり、その後の続報もないまゝに歴史の波に消え行く、といふことは多々ある。ある人にとつては、いつまで経つても忘れることのできない、あるいは忘れてはいけない大事な事件なのに、大手メディアはその時の旬のニュースしか取り上げてくれない。

 サイトポリシーによれば、Histrollは、100年かけて事件簿の集合体を収めるシステムを作るのだと言ふ。運営団体はProject2108といふ団体らしいが、運営母体であるProject2108が存続しない事態になつてもコンテンツは生き残ることができるやうな仕組みまでとつてゐると言ふ。

 これは本気であればすごい。インターネットの世界でこんな長期的な視点でサイト作りをしてゐる団体はさうない。米国サンフランシスコに「Internet Archive」といふ、世界中のウェブページを大量にコピー・保存してゐる団体があるが、まさにそれを思はせる取り組みだ。

 例へば、毎日世界中で大量のウェブページが生成されたりブログが更新されたりしてゐる。思ふに、毎日ブログを更新するときに、今日書いた何気ない記事が100年後にどうなつてゐるかといふことまで考へて書いてゐる人は少ないだらう。
 ある人は自分が亡くなつても、がんばつて書いた記事は記録として永遠に残つてほしいと考へるかもしれないし、ある人は自分が亡くなつたらブログ記事もすべて消してほしいと思ふかもしれない。
 現実には、グーグルキャッシュのやうな形でウェブページは中途半端に残つていくのが現実である。しかし本当に、今、日々生み出されてゐるこの大量のブログ記事などは100年後にはどうなるのだらう、と真剣に考へると少し怖い。

 ペタバイト級に記録された情報は、しかし、それが無秩序のまゝ保存されてゐるのであれば、記録としての意味を持たない。誰もが扱ひやすいやうに整理してまとめられた記録だけが記録としての意味を持つ。Histrollはそこらへんを目指してゐるのだらう。

 Histrollが見据える先はとてつもなく大きい。このサイトはまだ始まつたばかりで情報も少ないが、もし軌道に乗つて成功すれば、人類の歴史にたしかな足跡を残すことになるのだらう。


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