暫定龍吟録

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「一押し」と「お気に入り」

 FC2の今日のトラックバックテーマが、「一押しの一冊」といふことだつた。

今日のテーマは「あなたの一押しの一冊はなんですか?」です。 読んだ本の中で、印象深い、勇気付けられた、ためになったなどあなたにとっての一押しの一冊ありますか?どんなジャンルの本でもかまいません。あなたにとって忘れられない一冊を教えてください
FC2 トラックバックテーマ:「あなたの一押しの一冊はなんですか?」


 私はそもそも「お気に入りの本」を人に薦めたことがない。まつたくない。
 本をまつたく読んだことがないといふわけではなく、今まで読んできた本の中で印象深かつた本は何冊かあるが、それを「一押し」するかといふと別問題だ。

 私は音楽も好きだが、今まで人に音楽CDなどを薦めたことは一度もない。音楽の趣味といふのはそれこそ人によつて多種多様で、好きな音楽のジャンルやアーティストが合致することなど滅多にない。私がどんなに気に入つた音楽であつても、薦めてみて、相手がそれを気に入る確率は極めて低い。

 本も同じだ。
 特に私は本を読むときは、マイナーな本、売り上げの法則から言へば所謂「ロングテール」に属する本を読むことが多いので、まづ本の趣味が人と重なる可能性が低い。
 もちろんベストセラーを薦めれば、いろんな人に気に入つてもらへる可能性は高いだらう。だが、ベストセラーを薦めてどうするのか。ベストセラーの本は、私などが薦めなくてもすでに多くの人が手に取つてゐる本だ。
 私は、もし薦めるのだつたら、誰も知らないマイナーな本を薦めたいと思ふ。

 だがしかし、「お気に入りの本」はまづ人に薦めない。
 本当のお気に入りの本は誰にも教へたくないからだ。
 私だけでなく、すべての人がさうあるべきだと思つてゐる。厳密に言へば、「一押しの本」と「お気に入りの本」は違ふ。「一押しの本」は多くの人に紹介したい本であるべきだ。だが、「お気に入りの本」は誰にも教へてはならない。お気に入りは自分だけのお気に入りにしておかなければいけない。

 最近はウェブもソーシャル化が進んでゐて、例へばSocialtunesのやうに、お気に入りのモノを多くの人と共有することが流行つてゐたりする。
 私はかうした世の流れを、どちらかと言へば苦々しく思つてゐる。それは多くの人が「お気に入り」を放出してしまつてゐるからだ。繰り返すが、「一押し」のモノは「推薦したい」といふモノでなければならない。それは例へば、光り輝く玉が誰にも気づかれずこんなところに埋もれてるのはもつたいない、と感じる類のモノだ。でもそれは決して自分の「お気に入り」のモノではないのだ。

 自分の本当に大切なモノは自分の心の中だけにしまつておかなければいけない。

 「取つておきのお店を紹介します」と言ふ人がゐる。それを自分の大事な人に言ふのはありだが、ネット上で不特定多数の人に言ふのはどうなのか。
 取つておきなら取つておけ。