暫定龍吟録

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保田與重郎生誕100年記念シンポジウムに行ってきた

 今年の4月15日、保田與重郎の100歳の誕生日の日に、このブログで保田與重郎について取り上げたので、せっかくなので、「自然に生きる 保田與重郎の『日本』」の上映会とシンポジウムを聴きに行ってきた。 

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 会場は新橋のヤクルトホール。会場内は400人を超す人出でかなりの盛況だった。聴きに来てゐたのは全体的に中高年が多い。をぢさんかお爺さんが大半。男女比は7対3ぐらゐ。若い人は1割ぐらゐ。若い女性は2人ぐらゐしか見かけなかった。当然か。保田與重郎のシンポに若い女性が集まるはずがない。

 第1部と第2部に分かれてゐて、第1部は、映像プロデューサー佐藤一彦氏による『自然(かむながら)に生きる』と題した映像作品が上映された。日本の美しい伝統的な自然が、きれいな映像で綴られてゐる。保田の奈良の実家が立派な日本家屋で現在もそのまゝ残ってゐるのには驚いた。
 下の写真にある「身余堂」といふのは、京都にある保田が住んだ山荘の名前。こちらも保田の思想が体現された大変美しい建物だ。子どもの頃から使ってゐたといふ文机が印象的だった。

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 第2部は、『保田與重郎の“暮らしの思想”をめぐって』と題するシンポジウム。
 パネリストは、前田英樹(批評家)、井川一久(ジャーナリスト)、ヴルピッタ・ロマノ(評論家)、谷崎昭男(文芸評論家)、高橋公(NPOふるさと回帰支援センター)の5人。
 この内、実際に保田に会ったことがあるのは3人とのこと。

 何れも興味深い話で長く聴きたかったが、いかんせん時間の制限があり、十分に議論が尽くされたとは言へなかった。
 ちょっと面白かったのは、井川一久氏の「保田は行儀が悪かった」といふ話。なんとなく爆笑問題の太田光を聯想した。どことなく面影も似てゐる。

 新学社が企画した今回のシンポジウムは総じて良かった。保田與重郎といふと、どうしても右翼だの左翼だのといった観点からの政治思想が語られることが多いが、今回はさういった視点ではなく、「自然に生きる」といふ保田の素朴な思想をテーマにしてゐたのが良かった。このやうなテーマで初めに保田を紹介していくなら、なんとなく広く人々に受け入れられさうな気がする。

 新学社は、またこのメンバーで、あるいはメンバーを入れ替へてもいいので、保田に関するウェブ対談を開催してはどうだらうか。ウェブ上の対談ならば、時間の制約も紙幅の都合も無い。シンポジウムでもちらっと触れられた、21世紀的な現代の社会問題と保田の思想を合はせて考へるのは興味深い。保田について多くの人が語り合へるプラットフォームなどがあってもよい。

生誕百年、という祝い方が保田與重郎にふさわしいかどうかはわからないのだが、この節目の年に、この人について何かを言い、何かをすることが、ただいま現在の日本人にとって実にいいこと、大切なことだという気がしきりである。(前田英樹)


 この節目の年に、私もまたいろいろ考へてみたい。





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