暫定龍吟録

反便利、反インターネット的 This blog has not been updated since 2017

優位な立場にいてもデカい態度を取ってはいけない

 この世で一番嫌ひなタイプの人は誰ですか?と問はれたら、「態度がデカい人」と答へる。
 何が嫌ひかって、態度がデカい人間が一番嫌ひである。

 先日、年金事務所に行ったら、対応した50代くらゐの男性職員が、えらく腰の低い、と言ふか、めちゃくちゃ謙虚な姿勢の人で驚いた。愛想笑ひをしながら、いかにも「お客様」である私に一生懸命気を遣ってゐる感じがしたし、「なんでも叮嚀にご説明いたしますから、怒らないでね」といふ感じが伝はってきた。たまたま私に当たったその人がさういふ性格だったのかもしれないが、なんとなく年金事務所全体から、さういふ低姿勢が伝はってきたのだ。入口の一番目立つところに、「私たちの至らない点や改善点などがありましたらお申し付けください」といふお客様カードが置いてあったりもしたからだ。
 数年前に年金問題が国レベルでゴタゴタになったときに国民からさんざん批判を浴びた。それ以来、おそらく年金事務所には毎日たくさんのクレームの電話などがあるのだらう。年金事務所側としても元々は自分たち側の不手際から起こった問題に端を発してゐるので、平身低頭するしかないのだらう。

 職員、あるいは社員と、お客様との間に「強弱」あるいは「上下」の関係が一度できてしまふと、もうずっとその関係性が固定されてしまふ面がある気がする。そしてその関係性に乗っかってしまふ人が多い気がする。

 一方、同じ公共性の高いところで、私が知ってるかぎり態度がデカいなあと思ふのは、ハローワークの職員である。こちらは日本年金機構と違って国家公務員だけれども、以前世話になったときは、強圧的で態度のデカい、タメ口で話す職員にたくさん出会った。そこを訪れる人を見下してゐる感じの人が多かった。
 思ふに、無職の人といふのは精神的にも経済的にも追ひ込まれてゐる人が多いので、弱々しい態度で訪れる人も多いのだらう。それでハローワークの職員は「無能なおまへらのためにこっちはわざわざ仕事してやってんだよ」といふ強気な上から目線な態度になるのかもしれない。

 郵便局員と銀行員は、私感だが、その中間ぐらゐ。態度がデカいわけでもなく、極端にへりくだるわけでもない感じ。

 あと、私は関西に行ったことがないので、あくまで推測だが、JR西日本の社員はJR東日本の社員に比べて態度が謙虚なのではないだらうか。福知山線の事故以来、市民から会社の体質をさんざん批判されて、もう怒られ体性になってゐるのではないか。福知山線の事故とは関係のないちょっとしたトラブルがあったときも、客から「JR西は本当に福知山線事故のときのことを反省してゐるのか!」と怒鳴られれば、恐縮するしかない。
 JR東日本は最近そこまでの大事故を起こしてゐないせゐか、客に対してそこまで萎縮してをらず、やゝ態度が大きい社員が多いと感じる。毎日電車を利用してゐる私の感覚では、東京メトロの社員よりもJR東日本の社員の方が態度がデカい。

 もう何年か前の話になるが、NHKが一聯の大きな不祥事を起こして問題になったとき、全国で受信料の不払ひが相次いだことがあった。
 私はこの時、受信料を手動で払ってゐた。そして、今度集金員のをぢさんが来たら、やさしい言葉をかけようと思ってゐた。なぜなら国民はNHKの弱みを握ってゐる。集金員が来たら、「あんたのところはあれだけの不祥事を起こしておきながら、よく金を取りに来れるね」などと玄関先で言ふ人が全国で相次いでゐるだらうと思ったからだ。集金員のをぢさんはNHKの不祥事とはほとんど何の関係もない。不祥事は上層部の人間の問題である。それなのに末端の集金員のをぢさんが、各戸口に立つたびに、その家の人からクレームやら嫌味やらを言はれまくらなければならない。
 私はそんなNHKに対するクレームの嵐が全国で吹き荒れてゐる最中に集金に来たをぢさんに、「大変でせう」と労ひの言葉をかけた。するとそのをぢさんはホッとした表情を見せ、珍しく自分の苦境を理解してくれる人と出会ったと思ったのか、いろいろと自分の苦労話や身の上話などを始めた。1、2分ぐらゐそんな話をしてから少し嬉しさうな顔をして去って行った。

 どうして関係性は、強弱や上下で固定してしまふのだらう。そして一旦相手の弱みを握ると、ますます強い態度に出たがる人がゐる。
 
 職員や社員の側にもさういふ態度を取る人がゐるし、国民や客の側にもさういふ態度を取る人がゐる。自分が相手に対して優位に立ったときに、その立場に嵩をかけてデカい態度を取るべきではない。特に相手の弱みを握ったときに、鬼の首を取ったやうに得意になってふんぞり返るべきではない。

 世の中には、どちらかが一方的に偉い人で、どちらかが一方的に悪い人である関係なんて、そんなに無い。いつ上下は逆転するかも分からない。今日まで優位にゐた人が、明日大きな失敗をして謝罪する側にまわらなければならなくなるかもしれない。

 妙にへりくだったり極端に謙虚である必要はないけれども、デカい態度を取ることは殊に戒めなければならない。特に相手が低姿勢で来た場合は自己の態度を冷静に省みる注意が必要だらう。