暫定龍吟録

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Facebookタイムライン化の意味と従来型ホームページの価値の見直し

 今年2012年から、Facebookがタイムラインを導入したことは、少なくとも日本ではあまり大きな話題にならなかったやうだ。ちょっとしたデザイン変更、程度に受け止めてゐる人が多いのかもしれない。

 タイムラインが導入される前のFacebookはそれはそれで不便だった。年月日を示す「タイムスタンプ」がなく、その人の最近の行動履歴が書かれてゐても、いったいそれが何年の何月何日の行動なのかさっぱり分からないといふ、かなり気持ち悪い状態だった。「登録はしたけど全然使ってない」などといふ人の場合、何ヶ月も前の行動が「最近のアクティビティ」として表示されてゐたりした。
 そして私の最大の疑問は、「自分がいつからFacebookを使ひ始めたのかが分からない」といふものだった。Twitterでは、自分がいつからTwitterを使ひ始めたのかを調べるツールはいくらでもある。しかしFacebookにはない。私は絶対に同様の疑問を持ってゐる人が世界中にゐるはずだと思って、日本語、英語でこの謎を調べてみたが、その答へは「過去のメールボックスを開いて一番最初にFacebookからメールが届いた日を探せ」といふものだった。世界中で何億人もの人が使ってるサービスなのに、こんな方法でしか使ひ始めの日が分からないなんて驚きだった。

 Twitterにはタイムスタンプがある。今から「◯時間前」と相対的に表示するのが一般的である。

 ブログでもTwitterでも、あるいは他のウェブサービスでも、何か書いたらタイムスタンプが入るのは常識だと思ってゐたが、Facebookがさうしないのには、何か深い理由があるのだらうと思ってゐた。例へば、Facebookはすべてのユーザーが毎日活発に使ふのを想定してゐて、だから「最近のアクティビティ」は文字通りこゝ2、3日のアクティビティである、と。
 しかし、どう考へてもすべてのユーザーが毎日活発にFacebookを使ふはずがない。

 Facebookが「タイムライン」といふ概念を導入したのは、明らかにTwitterの影響だらう。
 日本ではTwitterの方が先に流行したけれども、アメリカではFacebookブームの後にTwitterブームが来たので「Twitterの方が新しい」といふ感覚がある。(参考:ザッカーバーグ、Twitterを「気にしすぎていた」ことを認める -TechCrunch
 そしてTwitterを真似てタイムラインを導入した結果どうなったか。Facebookのページの中心には時間軸ができて、あらゆる行動が何年の何月何日の行動なのか分かるやうになり、その時間軸を遡れば、その人があるいは自分がいつからFacebookを使ひ始めたのかも分かるやうになった。

 しかし単に「タイムスタンプ」を導入するのと、「タイムライン」といふ時間軸を導入するのとでは、少し意味が違ふ。
 時間軸を導入することで出て来る問題がある。


ホームページは単行本、ブログは雑誌

 以前、ホームページとブログの違ひについて考へたことがある。
 ブログもホームページの一種なので、こゝではブログとは異なる一般的なウェブサイトを「従来型ホームページ」と呼ぶことにしよう。実際にはWordPressやTumblrなどのブログツールでも従来型ホームページのやうなものを作ることができるので境界は曖昧だが、こゝでは一応分けておかう。

 で、昔その違ひについて考へて、自分なりに辿り着いた答へは、本の世界に譬へると「従来型ホームページは単行本で、ブログは雑誌みたいなもの」といふことだった。
 例へば私は書道に興味があるが、書道について詳しく書かれた単行本を一冊買へば、筆、墨、硯、紙のことはすべて分かる。一方、書道雑誌(月刊誌)の場合、毎月新しい情報が読めるといふ楽しみはあるが、特に「筆」の種類について調べたい、と思ったときは、過去に「筆特集」を組んでゐたバックナンバーを探さなければならない。

 ブログは日刊あるいは週刊誌や月刊誌などの雑誌のやうなものである。だからブログには月刊誌などと同じく「購読」といふ言葉があるし、毎月、毎日、新しい情報を届けるかはりに、有益な情報もどんどん過去へ過去へと埋もれていく。
 従来型ホームページは、単行本や辞書のやうなものだ。単行本、辞書、教科書などは数年間新しい情報は加はらないが、そのかはり調べたい情報が常に手前にある。バックナンバーといふ過去を探す必要がない。従来型ホームページにはさうした利点がある。


企業・団体のサイトは「従来型」がいい

 企業・団体のウェブサイトは今でもだいたい「従来型」の形で作られてゐるところが多い。
 私たちユーザーが企業のサイトに求めてゐるのは、「購読」や「更新」ではないからだ。何か読み物を読みに行くわけではない。大抵の場合、その企業・団体の製品情報や利用方法、本社支店の所在地やアクセスマップが見たかったりすることが多い。

 ところが偶に企業や店のサイトをブログ形式で運営してゐるところがある。店のサイトの場合、ユーザーが知りたいのは普通、その店の営業日や営業時間、アクセスマップなどだと思ふが、そんな重要な情報が過去記事になってゐたら、ユーザーにとってこんな不便なことはない。
 
 もしどうしても何か日常を綴りたいと言ふのであれば、従来型ホームページの中の一ページとしてブログなりTwitterなりを設置したらよい。さうして営業時間や所在地などの重要情報は常にトップページに表示しておくべきである。


佐賀県武雄市の例

 昨年2011年、佐賀県武雄市は市のホームページをFacebook上に移行した。

 「市長がはまっている」 佐賀県武雄市、市のページをFacebookに完全移行へ - ITmedia ニュース

 このニュースを聞いたとき、利用者はかなり不便だらうと思った。それでも、私は以前は、Facebookとは「もう一つのウェブ」の世界だ、といふ認識だったから、これからはかういふやり方も有りなんだらう、ぐらゐに思ってゐた。

 しかし、Facebookがタイムラインを導入したことにより、武雄市のFacebookサイト(facebook.com/takeocity)は完全に見づらいものになった。
 時間軸を導入したといふことは、Facebookがよりブログに似たものになったといふことである。
 例へば、各種申請書の手続きについての情報に新しい記事とか古い記事といふ概念があるのは違和感がある。しかも各種申請書類のダウンロードや観光情報など多くのコンテンツは従来のサイト(city.takeo.lg.jp)に置いたまゝでそこにリンクを張ってゐるだけである。

 企業がブランドを売り込むためのFacebookページとは訳が違ふ。今後、このやうにFacebookへ移行する公的機関が現れるのかどうか分からないけれど、もう少しユーザビリティについては考へた方がよい。


従来型ホームページの価値の見直し

 となると、従来型ホームページの「在り方」が見直されてくる。ブログもTwitterもFacebookもみな、情報が過去へ過去へと埋もれて行くなら、さうではない情報の提示の仕方をしてゐる従来型ホームページの在り方の価値が逆に高まってくるだらう。

 企業や団体だけではない。
 今では「個人のホームページ」と言へばブログだったり、時には単なるTwitterのその人のログ(またはそれをまとめたTwilogのやうなもの)であったりすることも多い。しかし昔はさうではなかった。「テキストサイト」などと呼ばれた個人のホームページはデザインはまちまちで今から見ると古めかしく感じられる見た目のサイトもあったが、今のブログやTwitterより便利な点がいろいろあった。
 その最たるものは「一覧性」だらう。トップページで全体が俯瞰できた。Yahoo!JAPANはなぜ人気があるか。Yahoo!Japanのトップページはごちゃごちゃしてゐるけれども、そこで「ニュース」「天気」「テレビ」「地図」などコンテンツの全体を一覧できる。そしてもう一点、緊急地震速報などの重要な情報はトップページに載せることができるといふ点がある。この点、リアルタイム性を重視してゐるTwitterなら「地震だ!」は合ってゐるけれども、ブログに「地震だ!」と書くのは何とも間の抜けた感じがする。もっとも地震情報などはYahoo!のやうな常に見られてゐるサイトだからこそであって、普通の個人サイトには載せない。個人サイトにはその個人にとっての重要情報といふことになる。

 ブログ、Twitter、Facebook、他にも時間軸を導入したサイトが多くなるにつれて、私はますます従来型のホームページに魅力を感じることが多くなってきた。

 たゞし、タイムスタンプは必要である。従来型ホームページで更新情報などの欄に「1/15更新!」などと書かれてゐるのをたまに見かけるが、それが今年の1月15日なのか去年の1月15日なのか、はたまたもっと昔の1月15日なのか分からないときがある。
 どんなコンテンツも将来「ソース」になる可能性がある。そのためにも年月日の記載は必要である。
 
 その点さへ気をつけて行けば、従来型ホームページの在り方(サイト構造)は価値あるものである。特に、コンテンツに古いとか新しいといった価値を付けるのが無用な場合にその力を発揮するだらう。

 従来型ホームページはもっと見直されていい。