暫定龍吟録

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北京オリンピックはもう大成功?

 8月の北京オリンピックに向けて、良くも悪くも中国の注目度が高まつてゐる。

 オリンピックの聖火リレーが世界各地で妨碍に遇つてゐる。聖火を奪はうとしたり、火を消さうとしたり。かうした行為は中国に対する抗議活動の一環であり、妨碍を行ふ人たちは、大体「フリーチベット!(チベットに自由を)」と叫んでゐる。

 私はかうした妨碍活動をテレビなどで見てゐて、少しく違和感を感じた。
 チベットの独立を巡る問題は、昔からある問題である。それは昨日今日に始まつた問題ではない。だが、「フリーチベット」といふ言葉は、ほとんど今年になつてから一斉に耳にするやうになつた言葉だ。「フリーチベット」を言ふ多くの人たちは、まるで今年になつてから急にこの問題に関心を持つたかのやうである。かういふ人たちは本当にチベットの問題に関心があるのだらうか。

 私は、中国を擁護するつもりではない。京都議定書に参加せず、環境問題を省みないで経済優先の道を突つ走つてゐる中国を私もまた苦々しく思つてゐる。
 だが、この問題は、猛烈な勢ひで経済発展を遂げる中国に対するバッシングなのではないかと思つた。つまりは「中国」の問題なのだ。人々が関心があるのはチベットの政治や宗教の問題ではないのだ。人々は「中国」を問題にしてゐる。

 かつて日本がバブルの時代に世界一の経済大国になつたときも、米国をはじめとする諸外国から随分、バッシングされた。「出ようとする杭は打たれる」のか。今の中国が世界中から叩かれるのは、その時の日本と同じやうな理由だといふ気がする。そして中国は良くも悪くも“目立ちすぎる”大国になつてきたことだけは間違ひない。だからこれだけ世界中から注目を浴びてゐるのだ。

 聖火リレーは、1936年のベルリンオリンピックから行はれてゐる70年以上の歴史がある伝統的なイベントだが、かつてこれほどまでに聖火リレーが注目されたオリンピックがあつただらうか。今までのオリンピックでもずつと聖火リレーは行はれてゐたけれども、どんなコースを走り、今、世界のどこを走つてゐるところか、なんて誰も興味を持つてゐなかつた。
 それが今回は、聖火リレーがどんなコースを走るかが全世界的に注目され、今、世界のどこを走つてゐるかといふ情報がまるでインターネット中継を見るかのやうに世界中の人々に共有されてゐる。世界中の人々が息を合はせて、自国に聖火がやつて来たタイミングで抗議活動を行つてゐる。
 つまり、皮肉にも、これほどまでに世界の人々が息を揃へたことは、かつて無かつたのだ。何と言つても、世界中が聖火リレーが自国にやつて来るのを今か今かと待ち構へてゐる雰囲気がある。

 中国にとつては皮肉のやうだが、これはオリンピックのプロモーションとしては、一面としては大成功と見ることもできる。もちろん、オリンピックの精神が平和であることから考へれば、このやうな妨碍活動が起こることは決して好ましいものではない。だが、この「目立ちすぎる大国」を対象にして、世界が一体感を強めてゐる。この雰囲気は北京オリンピックが終はるまでは続くだらう。

 中国が日本と違ふところは、世界中から叩かれてもさう簡単に折れるやうな小国ではない、といふところだ。


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