暫定龍吟録

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人は右側通行?左側通行?

 突然ですが、質問です。
 皆さんは、人は右側通行だと思ひますか、左側通行だと思ひますか?

 今日、新聞の読者投稿欄を見てゐて、70代男性からの面白い投稿を見つけた。

 友人たちと花見に出かけたとき歩道が混雑してゐて、皆左側を歩いてゐた。すると60代の仲間が「本来、人は右側通行ですよね」と異議を唱へた。70代の自分は「人は左側通行」と習つたし、左側通行に何の違和感も感じなかつた。しかし、60代の彼は「人は右側通行と習つた」と言ふ。

といふ内容の投稿だつた。投稿者は世代の差を感じたらしいのだ。

 私は、ずつと若い世代で、東京で生まれ育つてきたが、ずつと左側通行で通してきた。渋谷や池袋など混雑した街では、皆、大体左側を歩くし、その流れで、エスカレーターに乗つたときも左側に立つ。狭い道で対抗者とすれ違ふときは、大抵、左側に避ける。左側を通るのは、東京では常識であり、暗黙のルールである、と思つてゐた。
 だが、時々、多くの人が左側を歩いてゐるにもかゝはらず、強引に右側を歩かうとする、をぢさん、をばさんがゐる。かういふ人はなんなんだらう、と前から疑問に思つてゐたが、今日の新聞投稿を読んで、少し合点がいつたやうな気がする。

 さう言へば、私の父(60代)も、「最近、左側を歩く人が多いでせう。をかしいよなあ。本来、人は右側通行のはずなのになあ」とぼやいてゐたことがあつた。そのとき私は反論した。「少なくとも、東京では左側通行が常識です。人は右、なんていふ標語は、戦後に新しくできたルールに過ぎない」と。だが、父のこのぼやきも、今日の新聞投稿と合はせて考へれば、納得がいく。

 昔、武士が帯刀してゐた時代は、刀の鞘どうしが当たつて喧嘩にならないやう、左側を歩いてゐた、といふ話も聞いたことがある。

 つまり、かういふことだ。
 日本、少なくとも江戸・東京では、昔から左側通行の慣わしだつたが、戦後のある時代に教育を受けた人々は右側通行に固執してゐる。それがたぶん、今の60代(ひよつとしたら50代も?)の人々なのだ。70代以上の人々は、さういふ教育は受けてないので、昔ながらの左側通行を通す。一方、若い人々は、教育よりも、現代の東京の圧倒的な人込みの中で、左側通行の暗黙のルールの中で育つてゐるので、違和感なく左側を歩いてゐる。
 これが、私の推論だ。
 
 新聞に登場する60代の人や私の父の主張がをかしいのは、「本来」といふ言葉を使つてゐるところだ。60代の彼らからすれば、「本来」つまり日本では古来より人は右側通行であつたはずなのに、最近の人は皆、左側を歩くやうになつてしまつて嘆かはしい、と言ひたいのだらう。
 だが、この認識は間違つてゐる。新聞の投稿者の70代の男性が「左側通行に違和感を感じない」と語つてゐるのをみると、やはり「人は右」といふ常識は日本古来の「本来」の伝統ではないのだ。

 人の右側通行、左側通行といふ、こんな何気ない常識に、世代間格差が見てとれるのが面白い。この話には、世代差だけでなく地域差もあるだらう。人の少ない田舎では、どちら側を歩くか、なんていふ常識が育つのだらうか?いや、そもそも田舎の人は普段の移動手段は車だから、「道を歩く」なんていふ習慣がないか。

 皆さんの地域ではどうですか?




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