暫定龍吟録

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スピード社水着で新記録続出のもう2つの理由

 水泳界において、英国スピード(SPEEDO)社の新水着「レーザー・レーサー(LR)」を着た選手が次々と世界記録を更新して話題となつてゐる。
 日本でも、6月のジャパンオープンでスピード社の水着を着た選手たちが15個の日本新記録を出し話題となつた。平泳ぎの北島康介選手はこの水着を着て世界新記録まで出した。

 こゝまで好記録が続出したことで、日本水泳陣が今度の北京五輪で、はたしてスピード社の水着を着てもよいのか、それとも契約してゐる国内の水着メーカー(ミズノ・アシックス・デサント)の水着を着なければいけないのか、といふ問題が浮上してゐる。

 ところで、なぜ、こゝまで新記録が続出したのだらうか。

 もちろん、スピード社が開発したこのLRといふ新水着の性能がすばらしい、といふのが一番の理由だと思ふ。聞くところによれば、LRは、

・超音波でつなぎ合はせてゐるので縫ひ目がない
・強い締め付けで水の抵抗を小さくする
・水をよくはじく

といつた、特徴があるといふ。

 たしかに、このすぐれた性能こそ、新記録続出の最大の理由であらう。

 だが私は、今回のジャパンオープンで、日本人選手が新記録を続出させた理由は、あと二つぐらゐあるのではないかと思つてゐる。
 その二つの理由とは、

1.プラシーボ効果
 一つ目は、プラシーボ効果である。プラシーボ効果とは、何の生理作用もない偽の薬を「これはよく効く薬だ」といつて医者から渡された患者が、その薬を飲んで本当に病気が良くなつてしまふといふもの。つまり、実際の性能以上に自己暗示が強く作用する場合だ。
 今回の大会でも、スピード社の水着を着た日本人選手たちに、ある程度、この種の暗示があつたと思はれる。泳ぐ前からすでに、世界記録が続出してゐる「魔法の水着」といふ触れ込みつきだ。これを着たら速く泳げさうな気がする、といふ気持ちが選手の泳ぎに前向きに作用したと考へられる。

2.研究室効果
 二つ目の理由は、研究室効果だ。「研究室効果」といふ言葉はなくて、これは私が勝手に名付けたものだ。
 ノーベル賞、特に自然科学系のノーベル賞は、不思議なことに米国の大学の研究室からばかり出る。これはなぜなのか、以前、考へたことがある。
 あるノーベル賞科学者が、「米国の大学にゐると、同じ研究室の先輩や同僚がノーベル賞を受賞してゐるし、あるいは同じ大学内から多数のノーベル賞が出てゐるので、自分がノーベル賞を取つてもをかしくないんぢやないか、といふ気がしてくる」と語つてゐるのを聞いたことがある。
 つまり、日本の大学にゐる研究者は、自分がノーベル賞を取れるわけがないと思つて研究してゐるが、米国の大学の研究者は初めから自分がノーベル賞を取れるかもしれないと思つて研究に取り組んでゐる。自然とノーベル賞の方に研究内容も寄り添つて行くのだらう。
 これを私は研究室効果と呼んでゐる。
 これと同じことが今回の大会でも起きたと私は思つてゐる。

みんながぽんぽんと日本記録を出すのを見て「私も絶対に出そう」と思つた。

 女子背泳ぎで日本新記録を出した中村礼子選手の言葉だ。
 周りの皆が好記録を連発してゐると、「それが普通」といふ空気が生まれるのだと思ふ。さうした空気に「釣られて」記録を出すといふことがあると思ふ。

 新記録続出の背景に、この二つの理由があつたであらうと私は考へてゐる。
 ともかく、何効果であれ、良い方に作用するならそれは良いわけで、日本人選手がこのまゝの良い状態で五輪で活躍してくれるなら、それは喜ばしいことだ。