暫定龍吟録

反便利、反インターネット的 This blog has not been updated since 2017

「ムペンバ効果」とネットへの過信

 本日放送のNHKテレビ「ためしてガッテン」で、ちよつと驚くべき現象が紹介されてゐた。

 同じ条件の下で、普通の水と熱いお湯を同時に冷やした場合、お湯の方が早く凍る、と言ふのだ。

 これを「ムペンバ効果」と言ひ、40年以上前から知られてゐる現象らしい。名前の由来はタンザニアの高校生ムペンバ君が発見したから。しかし理由は未だに科学的にきちんと説明できないらしい。

 私はこの番組を見てムペンバ効果といふものに興味を持ち、もつと詳しく知りたいと思ひ、早速、ネットで調べてみた。

 が、ヤフーで「ムペンバ効果」を検索してもたつたの5件、グーグルで検索してもたつたの10件しかヒットしなかつた。(2008年7月9日現在)。
 先日、50万項目を突破したネット上の巨大百科事典ウィキペディア日本語版にも、「ムペンバ効果」に関する項目はなかつた。
 (たゞし、"mpemba effect"でググると8960件ヒットし、Wikipedia英語版には"Mpemba effect"といふ項目がある。)

 (2008/7/10追記)今日見たら、ウィキペディア日本語版にも「ムペンバ効果」といふ項目が追加されてゐました。早速、英語版から翻訳されたやうです。


 どうやら私はネットを過信してゐたやうだ。
 テレビ、新聞、本、雑誌、広告などでちよつと見た情報は、あとでググれば詳細情報がわかる。もしわからなかつたら、それはググり方が下手だからだ。
 さう思ひ込んでる人は、世の中結構、多いのではないだらうか。かうした過信は、私たち現代人の新たな行動パターンを引き起こす。

 例へば、テレビである事柄が紹介されてゐる。電車内の広告である事柄が紹介されてゐる。そこでは、きちんとその事柄に関する説明もなされてゐるのだが、私たちはその説明を聞いたり読んだりしないで、その事柄に関するキーワードだけを探してゐる。キーワードとは、あとでネットで検索して調べるときに、どんなワードで調べたらいいかを考へてゐるのだ。

 私も、先日、ある会社に行かなければいけないことになつた。その時、先方の会社から電話を受けて、「当方の会社の場所がわかりますか?」と聞かれた。「わかりません」と答へると、相手は最寄り駅からの道順を詳しく説明してくれたが、その時相手の言葉は私の耳に入つてゐなかつた。私は、あとでその会社のホームページを見れば行き方はわかるだらうと高を括つてゐたのだ。だが、あとでその会社のホームページを見たら、詳しいアクセスマップは載つてをらず、その会社に辿り着くのに相当迷つてしまひ、私は電話での説明をちやんと聞いてゐなかつたことを後悔した。

 「詳しいことはあとでネットで」といふ悪い癖が染み付いてしまつてゐる。
 企業など発信する側が「詳しくはWebで」といふのはまだよい。だが、受身側がこの癖を身に付けてしまふのは困りものだ。ネットの世界にくらべてリアルの世界を疎かにしてしまふ。いや、疎かにするだけではなく、いつか見下してしまふかもしれない。ネット上にあるのが真実の情報でリアル社会にあるのは仮の情報だ、といふ錯覚に陥るかもしれない。

 検索でヒットしなかつたからといつて、それがこの世に存在しないといふわけではない。例へば、ムペンバ効果は、たまたま日本では知られてゐなかつたといふだけだらう。

 「ムペンバ効果」はいろいろなことを教へてくれた。熱いお湯より水の方が早く凍るだらう、といふ先入観を覆してくれたし、ネットで調べれば詳しいことがわかるだらう、といふ思ひ込みも覆してくれた。

 リアルの世界に存在してネットの世界に存在しないものなどいくらでもある。くれぐれもネットを過信しないことだ、自戒を込めてさう思ふ。