暫定龍吟録

反便利、反インターネット的 This blog has not been updated since 2017

友達がいないぼくのなつやすみ

 僅かな日数しかない夏休みをどう過ごすか、それなりに考へた。

 そして、生まれてこのかた、まつたく「遊び」といふものを知らずに生きてきた自分の人生を振り返つて、せつかくだから若い内に(もう若くないが)もつと遊んでおかう!と思つた。

 しーなねこさんのこの記事に触発された面もある。

 失われた10年を取り戻す。 - しーなねこの記録

 だが、私は、しーなねこさんのやうに女友達も男友達もゐない。しかも遊ぶ金もない。したがつて、「遊ぶ」と言つても、私のやうに貧乏で友達がゐない人間にとつては、自然と制約が出てくる。

 で、夏休みが始まる前に私が考へた遊び計画は、

 1.なるべく金のかゝらない遊びであること
 2.一人でできる遊びであること

といふ条件の下に計画を練ることとなつた。

 まづ旅行は駄目だ。交通費と宿泊費がかゝりすぎる。卓球とかテニスとかしてみたかつたが、さういふ相手が要るスポーツは駄目だ。夏だから海に行つてみたいが、一人で海に行つて何をすればいいのかよくわからない。サーフィンとやらも一度してみたいと思つてゐたが、いかんせん敷居が高すぎる。初めは誰かに連れてつてもらつてやらないと、いきなり一人で何から手をつけていいのかさつぱりわからない。
 やはり近場で、なるべく安上がりにすむスポーツや娯楽に的を絞らう。
 といふわけで、私が考へた「遊び」はこちら。

 ・バッティングセンター
 ・プール
 ・映画鑑賞
 ・一人カラオケ
 ・一人ボウリング

 我ながら発想が貧困だとは思ふが、でもこれ、ほとんど経験したことのないことばつかり。本当に私は人生において遊んだ経験がないのだ。これらをこの夏休みの間にすべて実行することに決めた。

 まづは、生まれて初めてのバッティングセンター。神宮外苑。高校の地元なのでこゝにバッティングセンターがあるのは昔から知つてゐたが、入るのは初めて。緊張する。仕組みや勝手がまつたくわからない。受付のをぢさんに「あのう、初めてなんですけど」と正直に言つたら、いろいろと説明してくれた。他の打席は皆、上手さうな人ばかり。自分みたいな初心者が来てもよかつたのだらうか。空いてる打席に入つてバットを選ぶ。意外に重い。軽く素振りをしろと書いてあつたので、軽く素振りをしてからコインを入れる。球が飛んできた。見事空振り。あれ、をかしいな。学生時代、体育の授業のソフトボールでは一度も空振りなんかしたことなくて、バッティングセンスには自信があつたんだけど。気のせゐだと思ひ、2球目に集中したが、またも空振り。3球目も空振り。4球目にしてやうやくバットに当たつた。ファウルだが。その後も空振りとファウルを繰り返し、あつといふ間に1ゲームが終はつた。5分ぐらゐ。バッティングセンターといふところはもう少し長時間遊べるところかと思つてゐたのだが、お金を払つてたつたの5分しか遊べないのか。しかもストレス解消になるかと思つてゐたのに、飛んでくるボールに集中するあまり、緊張の連続だつたやうな気がする。これはよほど通ひ詰めないと上達しないな。
 
 次はプール。遊園地のプールとかは高いし、人波に揉まれるので、区民プールがいい。秋葉原の近くにプールがあることはあまり知られてゐない。そこに決めた。
 は、いいが、水着を持つてゐない。今時はプールでどんな水着を着るのだらう。小学校のときのビキニみたいな恥づかしかつた水着の記憶しかない。で、デパートの水着売場に行つたら、今は膝上あたりまである丈の長いパンツが主流だとのこと。よかつた。これなら恥づかしくない。女性の店員さんに話しかけられたので「私のサイズはやはりSですかね」と聞いてみたら、私の痩せた体型を見て「Sですね」と力強く断言された。それなのに頭がでかい私は帽子のサイズはLを選んだのも恥づかしかつた。
 ところで、この買ひ物は誤算だつた。区民プールは確かに安いが、それに伴ふ水着と水泳帽とゴーグルの買ひ物は高くついた。
 夏の日射しの強い日の午後、秋葉原から歩いてプールへ。更衣室で真新しい水着に着替へてから何十年ぶりのプールへ。人は10人くらゐ。すいててよかつた。まつたく泳げなくなつてゐるだらう、といふ自分の予想を裏切つて、なんとかクロールで25メートル泳げたのには自分でも驚いた。平泳ぎができないのは相変はらずだつた。しかしやはり体力が続かず、後の時間はほとんどビート板にバタ足で過ごす。
 何年も前からプールに行きたいと思つてゐたので、今回行けて本当によかつた。

 次は、映画鑑賞。映画館といふところに行かなくてはいけない。小さいころ、母に連れられて「ガンダム」を観に行つて以来かなあ。これも勝手がよくわからない。でもまあ、そんな難しいことはないだらう。近所の映画館に行く。並んで大人一枚のチケットを買つて、館内へ。よく考へてから一番後ろの席へ。理由は、前の方だと大画面に圧倒されて疲れるだらうから。あと、自分は座高が高いので後ろの人に迷惑がかゝらないやうに。映画館と言へば、ポップコーンとコーラだらう、と何となく前から勝手に思つてゐたので、それも実践してみることに。しかし買つてみてポップコーンの量の多さにはうんざり。Sサイズなのにこの量。映画が始まる前から必死に食べ続けたが、とても映画が終はるまでに食べ終はる気がしない。結局、半分くらゐは残しました。飲み物も最初は足元に置いてゐたのだけれど、途中で肘掛のところに飲み物置き用の穴があいてることを発見。こんなことも知らなかつた。画面でかすぎ。音でかすぎ。でも、作品内容は満足だつたので、かなり高い満足感を得ながら何十年ぶりの映画館を後にした。

 お次は一人カラオケ。これは近年「ヒトカラ」といふ言葉もできて、かなり敷居が下がつてゐる。これは行けさう。近所のカラオケボックスへ。なるべく人の少ない昼間に行く。若者のグループとかと受付で鉢合はせたくない。受付で一人分の名前を書いていざ指定の個室へ行つてみたら、かなり広い部屋。空いてる時間帯だつたからよかつたのか、10人は入れさうな部屋だ。こんな広い部屋で一人。寂しくもあり、気持ちよくもある。誰も見てないのに、連れがゐる想定で歌つてしまつたとこが悲しい。これではストレス発散にならない。元々歌ふのは好きだ。だが、やはり聴衆が一人もゐないといふのは、歌ひがひがないやうな。結局一時間半歌つて終了。

 次は一人ボウリング。これはカラオケより敷居が高さうだ。家の近所にはボウリング場はないので生まれ故郷にボウリング場があつたのを思ひ出し、そこに行くことにする。図らずも盆に里帰りすることになつた。生まれ故郷と言つても電車ですぐだが。やはり人の少なささうな昼ごろに行く。受付で名前を書いて提出すると、「靴代は帰りに精算します」と言はれた。えっ、靴代?何それ。靴を履き替へるのか、で、それにお金がかゝるのか。ゲーム代だけだと思つてた。靴を選んで指定されたレーンへ。左隣は家族連れで、右隣は誰もゐない。これなら人目もあまり気にしないで済みさうだ。ボウリングは学生時代に一度だけやつたことがあつて、その時は結構スペアとかも取れてたので、そこそこ自信はあつた。が、初球いきなりガター。2球目もガター。なんだこれは。ボールが重過ぎて自分に合つてないんぢやないか。軽めのボールに変へて投げてみた。ストライク!ほうら、やつぱり。と思つたが、結局ストライクを取れたのはその一回だけ。あとは散々な出来でスコア68。悔しかつたので2ゲーム目にトライ。2ゲーム目は少し慣れてきてスペアとかも時々取れるやうになつた。でも、投げても投げても自分の順番なので、かなり疲れる。少し間を置いて休憩することにする。と、こゝで右隣のレーンに大学生風の若者男女グループがやつてきた。これはやだ。家族連れは平和でいいけど、若者グループに私の下手なフォームや女子並みに遅すぎるボールのスピードや低すぎるスコアを見られたら、馬鹿にされさうだ。しかも私は一人。もうこゝは開き直つて、何か言はれたら、下手だからかうして一人で練習しに来てるんぢやないか、と思ふことにした。だがやはり気になる。見られてる気がしてどうもプレイに集中できない。結局、腕前が未熟すぎるのと人目が気になりすぎるのとで、これもストレス発散にはならなかつたやうだ。しかし通ひ詰めれば、腕も上達するだらうし人目も気にならなくなるだらう。帰りに低すぎるスコア表をもらつて帰宅。

 これが今年の私の夏休み。この中で一番、対費用的に満足度が高いのは、2時間500円のプールかな。でも、水着代を考慮すると高い。それ以外だと映画が満足度が高かつた。だがこれは私が観た作品がたまたまよかつたから。次がカラオケ、ボウリング、バッティングセンターの順になるだらうか。

 生まれて初めて、こんなに遊んだ。少なくとも大人になつてからは間違ひなく初めてだ。これは充実してゐたと言へるのだらうか。たしかに一緒に行く人がゐたらもつと楽しかつただらう。

 しーなねこさんも言つてるやうに、これによつて私の失はれた青春時代が取り戻せたのかどうかは、分かりません。たぶんこの程度では、世間一般の人たちの青春時代の遊びの10分の1も堪能してないのでせう。
 でも、今までの人生でまつたく「遊び」をしないで過ごしてきてしまつた私にとつては、この夏休みに「チャレンジ」したさゝやかな遊びの数々は、小さいけれど価値ある一歩だつたのではないかと思つてゐるのです。