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三浦九段に対する将棋連盟の対応は「悪手」だったとは言えない

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 将棋の三浦弘行九段が、出場が決まっていた竜王戦へ出場しないことになる、という異例の事態があった。

 三浦九段はすでに竜王への挑戦権を獲得していたが、将棋連盟から出場停止処分を受けて、竜王戦番勝負へは出られないことになり、丸山忠久九段が繰り上げで出場することになった。背景には、将棋ソフトを使った不正の疑いがある、としてネットでも一頻り話題になっている。

日本将棋連盟は12日、15日に開幕する第29期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)で、挑戦者の三浦弘行九段(42)が出場しないことになったと発表した。対局中、スマートフォンなどに搭載の将棋ソフトを使って不正をした疑いもあるとして、説明を求めたという。連盟は、期日までに休場届が出されなかったため、12月31日まで公式戦の出場停止処分とした。
三浦九段は朝日新聞の取材に「不正はしていません。ぬれぎぬです」と話し、今後の対応は弁護士と相談中という。
(中略)
対局中は持ち時間の範囲で対局室から出られるが、連盟によると、三浦九段は今夏以降、離席が目立っていたという。連盟側が11日の常務会で聞き取りをしたところ、対局中のスマホなどの使用を否定。「別室で休んでいただけ。疑念を持たれたままでは対局できない。休場したい」と話したという。期日の翌12日までに休場届が提出されず、連盟は処分を決めた。
(『朝日新聞』2016年10月13日)


 このニュースに対し、三浦九段を擁護し、将棋連盟の対応の仕方を非難する声をたくさん聞いた。

 私は将棋連盟の側から、今回の騒動を考察してみたいと思う。以下、ネットでよく見た意見を太字にして、それに対する私のコメントを書き綴っている。


「クロだとしたら今回の処分は軽すぎるし、シロだとしたら重すぎる」

 今回の処分は、約三カ月弱の公式戦への出場停止、である。本当に不正をしていたのなら「除名」「永久追放」ぐらいのことであり三カ月弱の停止では軽すぎる。一方、一切の不正をしていなかったのなら、三カ月でもペナルティは重すぎるし、何より今後の棋士人生で一生、「不正疑惑の人」という目で見られてしまう、という声。

 しかし私は、今回の処分は、朝日新聞の報道の通りだとすれば、直接的には、「不正疑惑」に対するものではなくて、「休場すると言ったのに休場届を出さなかった」ことに対する処分だと読める。そう解すれば、三カ月弱の出場停止というのは妥当な処分であると思う。


「やってもいないことを証明しろなんて悪魔の証明だ。連盟側が不正の証拠を提出すべきだ」

 しかし、連盟も不正したという証拠を提出するのはほとんど不可能なことなのだ。「休憩室に監視カメラを設置しておけばよかったじゃないか」という声もあったが、仮に休憩室でスマホを操作する三浦九段の姿が映っていたとしても、それだけでは不正の証拠にはならない。奥さんとメールのやり取りをしていただけかもしれないし、それは従来、棋士の自由である。


「連盟は指し手のソフトとの一致率や離席率を調べるべき」

 三浦九段の指し手がソフト(コンピューター)とどのくらい一致しているか、というのは、実際多くの将棋ファンが検証している。だが、三浦九段自身も言うように、最善の手を尽くせば指し手がソフトと一致しても何ら不思議ではない。三浦九段は昔から研究熱心な棋士として有名である。三浦九段以外も、現代の棋士たちの多くが研究段階でコンピューターソフトを活用している。ソフトは過去の強い棋士たちの棋譜を学んでいる。今や棋士とソフトはお互いに学ぶ関係にある。

 また、離席率にしても、それを調べて離席率がとても高い、ということが判ったところで、それを以て「だから不正だ」とは言えない。対局中の離席は、従来自由である。何回でも、何時間でも。


「そもそも将棋アプリってそんなに強いの?」

 強い。終盤の詰め筋を発見するだけなら、一般の将棋ゲームアプリで事足りる。

 だが、必ずしもスマホに将棋アプリが入っている必要はない。三浦九段は自分のスマホには将棋アプリが入っていない、と言っているが、本当に不正をしようと思えばメールができるだけでも十分である。将棋には「棋譜」というものがある。これは「5六歩、7七銀成」といった単なる文字である。外部に協力者がいれば、その協力者が自宅でもっと強いコンピュータープログラムを走らせ、その「答え」をテキストデータとしてメールで伝えるだけで十分である。

 将棋アプリが入っているか入っていないかという問題ではないのである。


「スマホの通信ログを調べればいい」

 スマホの通信ログを調べたところで、どうなろう。例えばメールに、

こんにちは。
今度また会おう。


というメールが残っていたとして、一行目は五文字で二行目は七文字だから「5七」だ。というような簡単な秘密のルールを作っておけば他人にはわからない。ある局面で5七に動かせる駒は限られているし、どの駒を動かすべきなのかはプロならばわかる。もちろん、ア行からワ行までにすべての駒を対応させておいて、メールの一文字目がタ行で始まったら「銀」だ、などというルールを作っておくこともできる。

 メールでもスマホでもなくて、例えばポケベルのような原始的な通信手段でもじゅうぶん不正は可能である。「監視カメラに映っていたスマホの画面は将棋アプリには見えなかった」などという理由でシロとは言えないのである。


「だからと言って、疑わしいというだけで処分するのはおかしい」

 だから、今回は不正疑義に関する処分ではなく、あくまで休場すると言ったのに休場届を出さなかったことに対する処分なのである。(不正疑義に関する部分を含むという見方もある。→「将棋ファンから見た三浦弘行九段のソフト不正使用疑惑と竜王戦の挑戦者交代 | 将棋ワンストップ・ニュース」)。

 休場届が書面として提出されなければ、連盟側としては「勝手に休んだ」ということであり、これは処分を下すのに十分な理由である。(もっともその時点ではまだ竜王戦は始まっていなかったので三浦九段が「休んだ」という実績は無い。)

 また、複数の棋士から不正行為の可能性を訴えられている連盟としては、「何もしない」というわけにもいかない。


「三浦九段は竜王戦を辞退するわけがないと言っている」

 三浦九段はNHKの取材に対して、確かにそう答えている。

 これは私の勝手な憶測でしかないが、常務会に事情聴取に呼ばれた三浦九段はA級棋士である自分が不正を疑われたことにカチンときて、「こんな疑いを持たれた状態では竜王戦に出場できない。(だから疑いを解いてほしい)」と言った。三浦九段は括弧の中の気持ちを強調して言ったつもりだったが、連盟側は「出場できない」のところを受け取った。出場できないと言うのなら「それでは休場届を出してください」と言うしかない。三浦九段は竜王戦には出たかったので休場届は出さなかった。連盟側としては休場届が出されなかったら、出場停止処分にするしかない。


「連盟の対応が問題を泥沼化させた」

 泥沼化したのは、メディアや(私を含む)ファンが、興味深く取り上げているからだと思う。

 そもそも連盟は、最初は処分を下すつもりではなく、「話を聞こうじゃないか、あなたの言い分を聞こうじゃないか」ということで話を聞いたのだと思う。シロかクロかを物的証拠ではっきりさせることなど至難なことであることが分かっていたからこそ、本人が「不正はしていませんが、これからは疑いを持たれないように、振る舞いには気をつけます」と言えば、それで終わりにするつもりだったのではないか。


「三浦九段が裁判に訴えたらどうか」

 それは泥沼化になる。

 証人として渡辺竜王が法廷で、「この手は不自然ですよねえ。いかにもコンピューターっぽい手だと思いませんか」と言ったとして、その手がコンピューターっぽいかどうかなんて裁判官の誰も解らない。


「当事者(利害関係者)が登場するのがおかしい。利害関係のない第三者に判断してもらえばいい」

 三浦九段はプロ棋士の中でもトップクラスの棋士である。また研究熱心な棋士として昔から知られる。三浦九段の指し手の深い“意味”を果たしてどれだけの棋士が理解できるだろうか。どれだけの棋士が三浦九段の研究レベルに付いて来れるだろうか。トップクラスの他の棋士たちは理解できるだろうが、トップクラスであれば当然日頃から三浦九段と対戦する機会も多く、利害関係がある。

 つまり、三浦九段の指し手の意味を深いレベルで理解できる人たちはみんな利害関係者である。


「連盟がきちんとルールを決めていなかったのが悪い」

 それは一理ある。

 ただ、連盟はなるべくルールを「ガチガチ」にはしたくなかっただろう。盤の前に座っているより、ぶらぶらと歩いていたほうが良い手が閃く、という棋士もいるはずだ。ルールとして一律に決めてしまうと、すべての棋士の行動を束縛し、とても窮屈なものになってしまう。そして本当に証拠を押さえようとしたら、対局のたびにボディーチェック、スマホのメールもLINEもTwitterもすべて読まれる、トイレにまで付いて来られる、挙げ句の果てには将棋会館内のすべてのトイレに監視カメラを付けられる。そんなことは連盟は望んでいないし、他の棋士たちだって嫌だろう。

 連盟も、おそらく今回の件があったためと思われるが、先日、対局場へのスマホの持ち込みを禁止する、という新ルールを作った。しかし、スマホは駄目だけどガラケーだったらいいのか、とか、外部との通信手段はいくらでもある。通信機器を使わなくても対局室の窓から見える景色に映すことでも不正はできる。


「そもそも三浦九段はなぜ疑われたのか」

 報道によれば、複数の棋士たちからの訴えがあった、と。また、終盤での離席が多かった(または長かった)、と。

 対局中の離席は自由であるが、終盤は普通はあまり離席をしたくない。なぜなら、終盤は両者とも持ち時間が少なくなっており、「できるだけ読みに集中したい」、「できるだけ時間を取っておきたい」と思うからである。序盤や中盤ならともかく、終盤での離席はデメリットが大きい。

 そして、先にも言ったように、長手数の詰み手順があるかどうかは、棋士よりソフトの方が圧倒的に読み切れる。終盤の局面で詰むか詰まないかという微妙な局面では、ソフトはとても役に立つ。

 また、その場にいなければわからない微妙な疑義というものがあっただろう。この局面で席を立つのは不自然だとか、戻って来てすぐに迷わずに指したとか、席を離れる時にポケットが膨らんでいたとか、体を休めるならあっちの部屋で休めばいいのに何故かあっちの部屋に行ったとか、そういうことはその場にいた人間にしかわからない機微だ。


「では、どうすればいいのか」

 これはもう、三浦九段が「振る舞いを正す」しかない。

 勝手に疑われた挙句、「振る舞いを正す」と言われたら三浦九段は怒り心頭かもしれないが、不正を訴えた棋士たちはクロだと確信して訴えているのでこちらも怒り心頭である。しかし、100%シロという証明も100%クロという証明もほぼ不可能である。だとしたら、やはり、疑われないように心掛ける、ようにするしかない。
 
 竜王戦という将棋界で最も賞金額の高いタイトル戦で、棋士たちもみな神経は敏感になっている。そのような場であるからこそ、そしてまたトップクラスに位置する棋士の一人であるからこそ、対局中の振る舞いには殊更、気をつけなければならない。

 私は将棋ファンとして三浦九段が「振る舞いを正す」ことで問題が終息していくことを願っている。


「将棋連盟にはすべきことはないのか」

 今回の一連の騒動及び、それに対するネット上のファンたちの意見を読んでいて、将棋連盟に対する批判が多すぎるように感じたので、この記事では連盟寄りの書き方をした。

 「将棋界(将棋連盟)はムラ社会だ」とか「閉鎖的である」とか「民間の企業だったらあり得ない」とか、「今回の対応はひどい」という意見をたくさん見た。そうした批判の中には、「どうせ連盟の常務たちは将棋のことしか知らない世間知らずに違いない」というような先入観に基づくものがたくさんあるように思われた。

 将棋連盟側にまったく問題がなかったかどうかは分からない。話し合いの場で、最初からクロだと決めてかかるような嫌な言い方をした常務(または棋士)がいたのかもしれない。それで三浦九段が態度を硬化させたのかもしれない。それはその場に居なかった人間には分からない。そんな話し合いはおそらく議事録も残っていないだろう。

 チェスの世界ではひと足早くコンピューターとの共存が問題になり、今では試合によっては一部、コンピューターの使用が認められたりもしている(Advanced Chess)。今回の件を機に、コンピューターの利用についてのルール作りと棋士の対局中の振る舞いについての在り方を、連盟と将棋界に携わる人たち全員で考えてみるといいと思う。


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天皇譲位に伴う課題

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 なんとなく畏まった姿勢でテレビから流れてくる優諚を聞いた。

 NHKが報道したからには、もうこれは、お気持ちを汲んで速やかに譲位を実現させなければならない。

 こんな大事なことをNHKが臆測で報道するはずはなく、陛下自らがお言葉を述べられる前から、御意嚮が伝えられた時点で、「こういう方向で行きましょう」ということは決まっているはずである。

 「数年前から、そのようなお気持ちを示されていた」ということなら、本来なら数年前に報道すべきことだが、それを直ぐに報道しなかったのは、関係者の間で調整が付かなかったからだろう。そして今回報道に踏み切ったということは、ある程度の調整が付いたということだろう。

 報道しておいて、陛下のお言葉までいただいておいて、「お気持ちはわかるけど、法制度の関係で御意に沿うことは難しい」などということがあってはならない。なぜなら、テレビを通じて広く国民に示されたということは、これは「詔(みことのり)」だからである。

 だからこそ、速やかに具体的な実現を目指さなければいけない。「数年前から」が、もし仮に五年前からだとして、お気持ちを発表されてからさらに五年間、国民的議論を尽くして漸く実現に至ったとすると、御意に適うのに十年もかかったということになる。御病気、健康、御年齢による体力の問題に起因する今回の御発言なのに、それではあまりに遅すぎる。

 一方で、決まりを変えることには、さまざまな解決しなければならない問題がある。

 例えば、皇太子殿下が天皇になられた後、誰が皇太子になるのか、という問題。

 皇太子というのは、今までは「天皇の長男」だった。だが、今の皇太子殿下には男のお子様がおられない。愛子内親王は皇太子にはなられない。愛子内親王にはお子様がないので、「皇太孫」もいない。秋篠宮さまは、弟君に当たられるので、「皇太子」と言うのは違和感がある。悠仁さまは、甥である。皇位継承順位が一位になる秋篠宮さまを「皇太子」とするのか、それとも「皇太子不在」でいくのか。その場合、今まで皇太子殿下が担ってこられた公務はどうするのか。

 仁孝天皇以来、約二百年ぶりになる受禪踐阼となれば、またそれに伴う儀式の問題がいろいろ出てくるだろう。さらに、もし万が一、皇太子殿下が新しく天皇に即位されて直ぐに御不予があって公務を行えなくなった場合、今上天皇が「それではもう少し私が引き続き務めましょうかね」と仰せられた場合、これは一度退位したあとの再度の踐阼なので「重阼」ということになる。重阼となると、八世紀の孝謙天皇以来、ここ千二百五十年余り例がない。皇室典範にも規定がない。このような重阼を認めるのかどうか。

 考えなければいけない問題はたくさんある。

 皇室典範を改定すると、未来にわたってルールが変わってしまうので、今上天皇に限った特別法で対応しようという考え方も出てきている。しかし特例は前例になる。将来、「平成天皇(假)の時の例があるから」ということになる。また、今上天皇“だけ”を特別にはからうことが叡慮に適っているのか、という疑問もある。

 こうした諸問題を解決しつつ、速やかに宸襟を汲まなければならない。

 拙速を避けつつ、可及的速やかに。

 難しい課題を迫られている。

マイナンバーカードは住基カードの二の舞にはならない

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 マイナンバー制度に対する批判として、「マイナンバーカードは住基カードの二の舞になる」という声をよく見聞きする。住基カード(住民基本台帳カード)は導入に「400億円かけた」とも言われ、その割には全国民の5.5%にしか普及しなかったとも言われている。個人番号カード(以下、「マイナンバーカード」)も大々的に導入を進めた割には住基カードと同じように普及せず、金の無駄遣いになるだろう、というわけだ。

 だが私はマイナンバーカードが住基カードのように普及しないとは思わない。マイナンバーカードは普及するだろう。理由は、マイナンバーカードは住基カードと違って拡張性があるからだ。

 どれぐらい普及するかというと、現在の東京におけるSuica並みに普及するだろう。但し、国、或いはJ-LISが運用上の大きなヘマをして信用を失墜しなければ、の話だが。

 また、普及には時間がかかる。Suicaも発行が始まってから普及するまでに7、8年かかった。

 普及に時間がかかるのは、人々が便利さを実感するのに時間がかかるからだ。Suicaも初めの頃は、「改札でピッてできるやつでしょ」というほどの認識だった。が、その後コンビニで買い物もできる等、用途の拡大とともにその便利さが認識されるようになって徐々に普及していった。

 マイナンバーカードは住基カードと違って拡張性がある。これから幅広くいろんな用途で使われるようになっていく。今、多くの人々が「あんなカード持ってどうするの?」と言っているのは、メリットが感じられずデメリットの方が大きく感じられているからだ。

 今のところ、マイナンバーカードを持つメリットは、「納税が簡単になる」ということと「身分証明書として使える」ということぐらいしかない。後者に関しては運転免許証やパスポートを持ってる人はそれで間に合っている。

 マイナンバーカードを持つことに「反対だ」と言っている人にどうして持たないのかを尋ねてみたら、「ただでさえお財布の中がカードだらけなのに、これ以上カードを増やしたくない」と言っている人がいた。これは大きな認識誤りである。マイナンバーカードはそれらのカードを減らすためのカードなのである。今はまだ聯繫していないが、そのうち保険証、運転免許証、ポイントカード、キャッシュカードと聯繫していくことになり、それらのカードは財布の中から消え、マイナンバーカード一枚に集約されていくことになる。

 今はまだ、多くの日本国民がマイナンバーカードの使い方をピント来ていない。「納税(e-tax)と身分証明書ぐらいなら要らないかな」と思ってる人も多い。

 マイナンバーカードを持つことの大きなメリットの一つは公的個人認証だろう。もし多くの民間企業が、この公的個人認証を利用したサービスを作るなら、人々は「マイナンバーカードを持ってた方が便利だ」と思うようになるに違いない。

 一方、デメリットとしては「個人情報が盗まれそうで怖い」というのがあると思う。しかしこれも、「みんなの情報」が一遍に漏れるようになれば、次第に不安心理は解消されていくだろう。「赤信号みんなで渡れば怖くない」というこの国では、マイナンバーカードが広まっていない時期に自分一人だけの個人情報が漏れるのは怖いが、「国民1000万人分の個人情報が漏れました」というニュースを聞けば、「あ、私だけじゃないんだ」という不思議な安心感が出てくるはずだ。

 マイナンバーカードは普及しない、などという見方は甘い。特に公的個人認証の機能は現代のネット社会になくてはならない必須の機能であり、これを知ったとき、人々はマイナンバーカードの便利さに気づくだろう。

 マイナンバーカードの公的個人認証が秘めている大きな力を私は懼れている。だがほとんどの人は懼れず、「どうせ住基カードの二の舞になる」と見縊っている。住基カードの二の舞になることを憂うよりも、普及しすぎることによる弊害のほうを今から考えておくべきである。

 公的個人認証やマイナンバーカードの問題点については、以前も書いたが、また稿を改めて書きたいと思う。


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都知事が叩かれた理由

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 都知事が辞められた。

 次期都知事が誰になるのか、一都民として気になるニュースだ。

「辞めた」というよりは、ものすごい批判の集中砲火で「辞任に追い込まれた」といった方が正しいかもしれない。

 ところで、はてなブックマークコメントで

贈収賄とか口利きとかがあったならともかく、政治資金の私的利用だけでなんでここまでバッシングが過熱したのかは本当に疑問なんだよなあ

2016/06/14 23:53

といった声をたくさん見かけたので、この疑問を解きたいと思う。

 元都知事が批判されたのは、その「贅沢ぶり」が批判されたわけだが、贅沢だったのは以前からだったわけで、その時にはまだ叩かれていなかった。なぜ叩かれていなかったかと言うと、まだ贅沢ぶりが明らかになっていなかったからである。なぜ明らかになっていなかったかと言うと、誰も明らかにしなかったからである。なぜ誰も明らかにしなかったかと言うと、知事のことを嫌っていなかったからである。

 2016年3月16日、知事は新宿区にある都有地を韓国人学校に貸し出す方針を発表した。もう忘れてしまった人も多いかもしれないが、この時期はいわゆる「保育園問題」が世論を賑わせていた。
 反自民層は「保育所を建てないなんて!」という理由で、自民支持層は「韓国なんて!」という理由で知事のことが嫌いになった。とりわけ「ネット右翼」と呼ばれるような層の人たちが韓国を優遇したことで一気に知事を嫌いになった。
 それで多数派だった自民支持層が一気に知事の過去の汚い部分(贅沢な部分)を洗い出し始めた。探せばどんどん出てくる。そこに、元々反自民だった層が乗っかって批判の攻勢を強める。

 元知事は、就任してからの二年間は、その前の猪瀬知事や石原知事にくらべても、ずっとニュースへの登場回数の少ない人だった。可もなく不可もなく、褒められもせず、批判もされず、といったような人だった。(共産党は一定して細々と批判していたかもしれないが。)

 それが韓国人学校の計画を発表してからは一転してバッシングの嵐になった。右を見ても左を見てももうそこには味方はいなかった。その状態がだいたい3月から6月まで三ヶ月ほど続き、辞任に追い込まれた。2016年3月16日が知事の命運の分かれ道になった。

 元知事を支持した211万人余りの人はどこに行ってしまったのだろう。

携帯電話「2年縛り是正」とは何だったのか

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(この記事は2016年の記事です。情報が旧くなっている可能性があります)

 総務省の要請により、大手携帯電話各社が、いわゆる「2年縛り」を是正するかも、というニュースを昨年から聞いていた。

 しかし今年2016年の春に携帯大手三社から発表された新プランは、ずいぶん期待外れのものだった。違約金(契約解除料)のないプランを新設するかわりに月々の支払い料金を高くする、という、多くの利用者にとってはほとんど何のメリットもないプランだった。

 私は、総務省が「2年縛りの是正を要請」というニュースを聞いたときに、「ああ、これで2年縛りがなくなるんだな」と思っていたが、そうではなかった。今年に入ってから携帯各社が発表したのは「2年を過ぎた場合の違約金の廃止」である。これでは2年縛りが無くなったということにはならない。なぜならば、「2年縛り」はもう一つあるからである。


もう一つの“2年縛り”

 「2年縛り」には、2年目のタイミングで解約しないと違約金を取られる、という縛りとは別の「もう一つの2年縛り」がある。

 それは24カ月にわたる割引き制度である。ドコモでは「月々サポート」と呼ばれ、auでは「毎月割」と呼ばれ、ソフトバンクでは「月々割」と呼ばれているもの。2年間にわたって端末代を割引く(と少なくとも多くの利用者が思っている)仕組みである。

 これにより、2年の途中で携帯会社を変えたり、機種変更をしたりすると、割引きが受けられなくなるので利用者は損をする。つまり、違約金の方の制度が見直されたとしても、こちらの「もう一つの2年縛り」があるかぎり、利用者は結局、2年の縛りからは逃れることができない。

 総務省はこのことを見落としていたのだろうか。


総務省の考え方

 総務省の有識者会議は「有識者」の集まりだけあって、もちろん、この「もう一つの2年縛り」のことも承知している。が、この月々割に関しては「利用者にわかりやすくすること」と言う程度に留めている。この程度の勧告なら、「ホームページの文言をちょっと変えて利用者にわかりやすいようにしておきました」とするだけで充分である。

 総務省が、こちらの「もう一つの2年縛り」に大きく踏み込まないのは、二つの「2年縛り」を比べたときに、「違約金を取る」、「契約更新月が一カ月しかない」、「契約自動更新」などといった決まりの方が、より「悪質」だと判断したためだろう。


もう一つの2年縛りがなくならないかぎり

 巷間では、携帯各社が発表した新プランを見て「結局高い」などと言っている声を多く聞くが、抑も、この「もう一つの2年縛り」がなくならないかぎり、結局私たち利用者は相変わらず2年縛りの軛の中なのだ。